
柴犬は皮膚病にかかりやすいことでも有名な犬種です。その理由として、もともとアレルギー体質として生まれてくる柴犬が多いことが挙げられています。
しかしこの皮膚病、厄介なことに症状や原因がひとつではありません。そのため、何が原因になっているかで治療法や対策方法がガラリと変わってきます。
そこで、柴犬がかかりやすい代表的な皮膚病を2つ紹介したいと思います!犬に多い皮膚病全般に関しては【犬に多い皮膚病の種類】かさぶたや体が臭い原因は?薬だけで治る?で解説していますので、こちらもぜひ参考にしてみて下さい。
柴犬の皮膚病は「アレルギー」が主な原因!
柴犬はアレルギーを起こしやすい犬種として知られています。
しかもアレルギー体質の犬は、皮膚のバリア機能も弱い特徴があります。そのためアレルギー反応を起こすと、必ずと言っていいほど「皮膚病」として症状が出やすいのです。
つまり、アレルギーを発症させない為には「アレルゲン(アレルギーの原因物質)」と接しない生活をすれば良いのですが、そのためにはアレルギーを発症させる「アレルゲン」を特定する必要があります。
とは言え、アレルゲンを確実に特定できるケースばかりではありませんので、例えば食事アレルゲン回避の場合には疑わしい可能性のある食材を徹底的に避けるというのが現実的な予防方法になります。
そこで、柴犬がなりやすい2つのアレルギー性皮膚炎を紹介します。それぞれの原因や症状の特徴について学び、深刻な皮膚病になる前に予防をしてあげましょう。
柴犬にとても多い「アトピー性皮膚炎」
- 先天的な皮膚バリア異常
- アレルゲンの侵入・感作
- アレルギー反応の発生
- かゆみ行動
- 掻き壊しによる後天的なバリア機能の低下
アトピー性皮膚炎は室内で飼われている柴犬に多く見られますが、この皮膚病は遺伝的要因が強いため、室内外問わず発症するケースが多いです。
具体的な流れを上記にまとめてみました。このような形で、負の痒みサイクルが発生するのです(1→5の流れに、5→2のループが加わります)。
更には、先天的な皮膚バリア機能の低下から皮膚の菌の多様性の減少(ディスバイオーシス)が発生し、ブドウ球菌感染等(膿皮症)等も発生します。
症状
- 慢性で再発する痒み
- 特徴的な分布(手足の先・耳道・脇や股・目や口周り)を伴う湿疹
症状として典型的な部位は「手足の先」「耳道」「脇や股」「眼や口の周り」です。反対に「耳のフチ」や「腰の部分」は少ないです。
かゆみ行動で、その結果として皮膚が赤くなったり脱毛したり、最終的に皮膚が分厚くなったり色素沈着で黒くなったりします。
ただし、診断には感染症等の除外も必要です。まずはお近くの皮膚科に長けた動物病院での診察をお勧めします。
治療法
アトピー性皮膚炎の治療は急性期と慢性期に大きく分けられます。
急性期は様々な薬(ステロイド・アポキル・ゼンレリア・抗ヒスタミン薬…)を中心に治療しますが、慢性期にはそれらを減薬・変更(シクロスポリン・サイトポイント…)しながら、保湿や腸活(腸内細菌叢の改善)をします。
食事アレルギーで無ければ栄養バランスがちゃんとした食事や、皮膚に良い成分が強化された食事が良いでしょう。ただしアトピーの3割には食事アレルギーが併発しているとの論文もありますので、下記の食事アレルギーにも注意をしましょう。
予防法
アトピー性皮膚炎は、何が原因になっているのかを特定するのに時間がかかります。なぜなら、それだけ原因となるものが身の回りに溢れているからです。
日頃から飼い主さんができることとしては、寝具やマット、エアコンなどを含め室内全体を清潔に保つこと(こまめな掃除と換気)と、柴犬の体を清潔に保ってあげることです。
シャンプーに関しては自己判断ではなく、獣医師の先生指導のもと行うことが大切です。特に感染症を併発している時など、症状に応じて保湿とセットで行う必要がある時期もあるので、プロの判断が必要になってきます。
また、漫然とシャンプーをするのは皮膚を害する可能性もありますので、入浴剤に変更したりも含めて症状に応じて変化させる事が大切です。
とくに梅雨時期は症状が悪化しやすいので、湿気がこもらないよう十分注意して下さい。
最近増えてきた「食物アレルギー性の皮膚炎」
食物アレルギーによる皮膚炎は、アレルゲンとなる食物に触れたり摂取することで発症します。もっとも代表的な食べ物、と言うのは実はありません(確率的に良く食べうる食べ物がよく問題になるだけ)。
ドッグフードを選ぶ場合は「何がその子にとって合いそうな食事か?」を、それぞれの子で考えて、選んだ食事は100%それだけ(オヤツもサプリも含めて)にした上で、連続2カ月食べて調子が良くなるか?を判断する事が大切です。
先ほどもお伝えした通り、特に決まった食べ物はは無いので「今食べている食材」「今まで食べた食材」を怪しいと考えて食材から除去しましょう。
本来は交差性等も考えますので、分からない場合は詳しい獣医師と相談する事をお勧めします。
症状
- 赤み(※腰が多い、という説はある。)
- 通常より薬が効き辛い強い痒み
- 1日3~5回以上と便の回数が多い
- 1年中痒い
- 1歳以下か7歳以上での発症
食物アレルギー性の皮膚炎を発症すると、強い痒みや赤みが症状として出ます。痒みに関しては、通常よりも薬が効きづらいです。
基本的には症状の見た目でアトピーと区別がつき難く、また上に書いた様にアトピーと食物アレルギーの併発もあります。
また、必ず起こるわけではありませんが、下痢や嘔吐など消化器症状も同時に引き起こすケースもあります。
治療法
食物アレルギーを発症してしまった時の治療法としては、可能ならばアレルゲンを特定し、それらを含まない食事を与え続けて改善していく方法が一般的な治療法になります。
同時に皮膚のかゆみが出ている場合は、かゆみ止めなどを使用して症状を和らげていきます。
予防法
食物アレルギーを予防するためには、その子がアレルギーを起こす可能性のある食材を与えないよう工夫することが何より重要です。
本当はアレルギー検査でアレルゲンを特定してもらうのが理想ですが、費用も時間もそれなりにかかるため、まずは与える食材に気を配ることから始めるしか方法はありません。
とくにドッグフードは、アレルゲンとなりやすい食材がたくさん含まれています。あまりにも安いもの、そして添加物やワケの分からない原材料が入っている商品は避け、本当に良質な素材だけを使用している商品に切り替えるようにしましょう。
また製造ラインで他の食材が混入しない対策をしているか?も確認が必要です。そして食物アレルギーが無さそうなら「皮膚にとって大切な栄養が豊富か?」の観点で食事を選んであげる事が大切になります。
柴犬の皮膚病で悩む飼い主さんは後を絶ちません。実際に皮膚病で毛が薄くなったり脱毛している柴犬も時たま見かけるので、決して珍しい病気ではないんだということが伺えます。
遺伝的な場合もあるのでこればかりは仕方のない部分もありますが、飼い主さんの意識次第では深刻な皮膚病に侵される前に予防してあげることも可能な場合があります。
ちなみに科学的に有効性を証明されたアレルギーの検査も有りますが、あくまで一つの目安です(毛だけで判断する事はできません)。
必須ではありませんし高価な検査なので、検討する場合は詳しい獣医師とよく相談しましょう。