「犬が震えている=病気」とは限りません。私たち人間もさまざまな理由から体が震えるように、犬も病気以外のことで体がプルプルと震えることはあります。
とは言え、震えている理由の中には病気が隠れていることもあるので、犬が震えてしまう原因とその理由について知っておくことが大事です。
こちらでは、犬の震えの中でもあまり問題がないケースと病院に行った方が良いケースについて、獣医師の先生監修のもと分かりやすくまとめてみました。
目次
「生理的要因」で犬が震える場合は基本的に大丈夫。
- 寒さを感じている
- 恐怖・警戒心からくるストレス
- 興奮している
- 飼い主の気を引こうとしている
犬が震える時は、比較的この生理的要因からくる震えが多いです。我が家の愛犬が震える時も、大体これに当てはまりますね。
この場合は、基本的に大丈夫なことがほとんどです。「愛犬が震えているな」と感じた時は、これからお伝えする原因に当てはまらないかをまず最初に確認してみましょう。
寒いから震える場合は温度調節に気を付ける。
私たちが寒い時にブルブルと震えるように、犬も寒さが原因で震えます。あまりにも寒い状態が長い時間続くと、低体温症を引き起こす恐れがあるので注意しましょう。
とくに季節の変わり目は、うまく体温調節ができずに震えている犬が多いです。中でも小型犬は熱の発散量が多く、大型犬よりも寒がりの傾向にあります。
愛犬を室内で飼っている場合は、室内の温度を24~26℃前後に保ってあげましょう。
犬の平均体温は37.8~39.3℃なので、人間が感じる気温と感覚とは異なります。人間の感じる快適さと愛犬の感じる快適さには相違がある可能性があります。
また、体高が人間と違うため、実際に愛犬がいる空間は低い位置にあります。温度や湿度も空間の高さで異なるため、実際に愛犬がいる空間が彼らにとって快適なのか、配慮する必要があります。
寒い時期はブランケットやペット用ヒーターなどを利用し、常にほんわか温かい状態を保ってあげましょう。
【恐怖・警戒心】ストレスで震える場合は環境を整える。
- 花火や掃除機の音
- 地震や雷など
- 自分よりも強そうな犬
- マスクをしている人
- 苦手な場所にいる時(動物病院など)
どんなに強そうな犬でも、苦手な音・もの・人・環境を目の当たりにすると強いストレスを感じるものです。すると自然と体がブルブルと震え出します。
上記で挙げたようなシチュエーションに不安や恐怖を感じて震える犬は多いです。私の愛犬も、東日本大震災の経験から地震があるたびに小刻みに震えてしまいます。
犬が苦手とする対象物や環境をなるべく避けることで、余計なストレスを与えずに済みます。
花火や工事の音などは避けようがないので、防音効果のあるカーテンなどを使用する、音楽を流すなどして工夫してみましょう。
興奮で震える場合はあまり問題がない。
これも結構あるあるですね。犬は興奮をすると、目を大きく見開きながら全身をブルブルッと震わせます。
よくあるのが、美味しそうな餌をもらう瞬間や目の前にごちそうがある時。あまりにもジラされていると「くぅ~んくぅ~ん」と鳴きながら身震いしていることもあります。
あとは、飼い主さんが帰宅した時にあまりの嬉しさから興奮して震える犬もいます。
嬉しさからくる興奮をわざわざ対処する必要はありませんが、どこに行っても興奮しすぎる場合はちゃんとしつけた方が良いでしょう。
とくに食べ物を見てすぐ興奮するようであれば、「マテ」や「オスワリ」などのコマンドを身につけて落ち着かせることも大切です。
飼い主の気を引くためにわざと震える場合がある。
「これは意外!」と思われたかもしれませんが、実は飼い主さんの気を引こうとしてわざと小刻みに震える犬もいます。
たとえば、飼い主さんに構ってほしい時。震えることで飼い主さんが優しくしてくれる、構ってくれると学習していると、何もなくても震えていることがあります。
とくに対処法はありません。あまりにも震えていることが多い場合は病気やケガの可能性もあるので、早めに獣医師へ相談しましょう。
震える+キャンと鳴くのは痛みが原因かも。
寝ているときに震える、リラックスしているときに震えるといった様子がある場合、何かの痛みによって震えている可能性があります。
気づかないうちにどこかケガをさせていたのかもしれませんし、あるいは骨折や脱臼をしているのかもしれません。
愛犬を触ったり抱き上げようとした時に「キャン」と鳴くようであれば、間違いなくどこか痛いはずです。ひどい時は、声をかけただけで唸ったり攻撃的になったりします。
ケガの場合は、下痢や嘔吐などの症状を見せることがほとんどないので気づきにくいです。もしジッと固まって震えているようであれば、まずは体の異変を疑うようにして下さい。そしてすぐに動物病院へ連絡をし、愛犬の様子を説明しましょう。
良心的な病院だと連れて行き方(抱き方)なども丁寧に教えてくれるので、自己判断で無理に動かす前に、まずは病院へ連絡されることをおすすめします。
【食欲や元気がない・吐く等】病気かもしれない犬の震えは病院へ。
病名 | 主な症状 |
---|---|
発熱 | 安静にしているのに体温が39℃を超えている |
てんかん | 痙攣や発作を繰り返す |
特発性振戦病 | 後ろ足が震える |
中毒症 | 痙攣のような震え・下痢嘔吐を伴う場合もある |
低血糖症 | 震え・意識レベルが低下する |
尿毒症 | けいれん・意識障害(末期症状) |
犬ジステンパーウイルス感染症 | けいれん・震え(末期症状) |
低体温症 | 体が中心部から冷たい・意識レベルが低下する |
異常なまでに震えている、もしくは震える以外の症状が見られる場合は、何か病気が潜んでいる可能性が高いです。異変が見られたらまずは病院に連れて行きましょう。
こちらでは、病気の中でも「震え」が症状として出てくるものをいくつかピックアップしてみました。順番にご覧ください。
※ここで紹介する病気はあくまでも一部です。何が原因で震えているのかは動物病院を受診するまで分かりませんから、必ず獣医師に診てもらいましょう。原因をすぐに特定できるものあれば、何度も検査を繰り返して病名を特定できるものもあります。
外部要因や感染症などによる「発熱」
- 気管支炎
- 肺炎
- 感染症
- 膀胱炎
- 熱中症
先ほど犬の平均体温について少し触れましたが、犬の体温が39℃を超えているときは発熱している可能性があります。(仔犬の場合は成犬に比べて少し体温は高くなります)
発熱する原因はさまざまで、感染症や膀胱炎などが考えられます。
主な症状は病気にもよりますが、全身が震える、呼吸が荒い、咳込む、元気がない、食欲の低下、下痢、嘔吐、多飲多尿などが挙げられます。
犬も発熱している時はぐったりしていることが多いです。食欲もなく元気がない場合は、すぐに動物病院で診察してもらいましょう。41度を超えると死に至ることもあります。
痙攣や発作を繰り返す「てんかん」
てんかんは、脳内での神経伝達に何らかの異常があって発症します。何のまえぶれも無く突然起こる場合と、前兆症状がある場合があります。
体が震える代表的な病気と言えば「てんかん」です。しかしこの場合、「震える」ではなく「痙攣」しているのが特徴になります。
もしも愛犬が定期的に痙攣発作を繰り返しているようであれば、脳に何らかの障害がある可能性が高いと言えます。
てんかんは急にガタガタ震え出して意識を失ったりしますが、まずは慌てずにその姿を見守るようにして下さい。意識がないだけで痛みや苦しみがあるわけではありません。
てんかんの症状によって治療法が異なってくるため、飼い主さんは愛犬の震えている時の様子や状況をしっかりとメモし、できるなら動画を撮って保存し、獣医さんに見せられるようにしておきましょう。診察時にタイミングよく発作が出るとは限りません。
後ろ足が震える「特発性振戦病」
特発性振戦病は、柴犬や柴系雑種によく見られる病気です。10歳を過ぎた頃から、立ち止まった時にだけ後ろ足が震えるという特徴があります。
原因は不明ですが、神経の伝達がうまくいかないことで起きているのではないかと推測されているようです。
特発生振戦病に関しては原因も理療方法もまだ確立されていません。対症療法として抗痙攣薬などの投与が必要になるかは総合的な判断が必要です。
日頃から気分転換や運動のためのお散歩など、筋力が低下しないように生活することも老犬にとっては重要です。
誤飲誤食による「中毒症」
- 痙攣のような震え
- 下痢
- 嘔吐
- 咳込む
- 泡を吹く、ヨダレが多い
中毒性のあるものを食べた、あるいは誤飲誤食をしたことが原因で突然震え出すことがあります。
確実に食べたことが分かっており、30分程度しか経っていないようなら、病院で吐かせる処置を行った方が良い場合があります。
いつ食べたか分からない場合でも、危険物を摂取した場合にはすぐに獣医さんに相談して下さい。
中毒症による震えは、放置すればするほど命の危険性が高まります。食べたものが残っているのであれば、それを持参してすぐに動物病院へ連れて行くようにして下さい。
血糖値が下がる「低血糖症」
低血糖症は、血液中の糖分(グルコースが)少なくなることで起きる病気です。グルコースが減ると細胞へ十分に栄養が行き渡らなくなるため、激しい震えが起きるようになります。
軽い時は元気がない様子を見せるくらいでも、ひどい時は意識を失ったり失明することもあります。また、仔犬と成犬の低血糖症は原因が異なる場合が多いです。
たとえ血糖値を正常にコントロールできる犬でも、低血糖症になることはあります。応急処置として、砂糖水や犬用のミルクなどをすぐに用意できるようにするといいでしょう。
あとは日頃の食事で適度な栄養を摂取することはもちろん、定期検診を受けて臓器の機能が低下してないかも常に確認することが大切です。
腎不全の末期症状である「尿毒症」
- 口臭が強い
- 痙攣や知覚過敏などの神経症状
- 食欲低下
- 元気がない
- 嘔吐
- 下痢
尿毒症とは、腎臓がほとんど機能しなくなることで現れる症状の一つとして知られています。けいれんや震えが出てきている場合は、症状がかなり進んでいる可能性が高いです。
腎臓が通常通りに働いている場合は、余分な水分や老廃物などを尿として排出できます。しかし腎臓の機能が低下すると尿がうまく作られず、老廃物が体の中に溜まっていくんです。
犬の尿毒症は進行がとても早いので、疑いがある場合はすぐ病院に連れていきましょう。
感染力が強い「犬ジステンパーウイルス感染症」
犬ジステンパーウイルス感染症は、感染力・致死率が非常に高いと言われている病気です。末期症状としてジステンパー脳炎を起こすと、けいれんや震えが現れます。
混合ワクチンで防ぐことができるので、しっかりと対策しておくことが重要です。仔犬でまだワクチンプログラムが完了していない場合は、他の犬との触れ合いを避けましょう。
体温がコントロールできなくなる「低体温症」
少し寒いといったレベルで震えている場合は問題ありませんが、寒さが度を超してくると「低体温症」になる可能性もあります。
低体温症が疑われる場合、応急処置としてますはは乾いたタオルで体を覆ったり、乾布摩擦のように体を優しくさすったりしてあげてみましょう。
ヒーターやドライヤーで温める方法は低温やけどの危険性もあるため、注意が必要です。
体が異常に冷たいのであれば、すぐ病院に連れて行ってあげましょう。病院では適切な方法で体を温めたり、必要に応じて点滴を行う場合があります。
高齢犬が震える原因は筋力低下によるものが多い。
犬も人間と同様、年齢を重ねるごとに筋力が自然と低下していきます。たとえ高齢じゃなくても、運動不足によって筋肉量が低下している犬もいます。
筋力が弱くなっていると、立っている時に体をしっかり支えることができません。すると当然ながら、前脚や後ろ脚がガクガクと震えるようになります。
散歩直後に後ろ脚が震えている、立っている時に全身が震えているなどといった様子が頻繁に見られるのであれば、もしかしたら全身の筋力が低下しているのかもしれません。
愛犬の筋力を低下させないためにも、毎日の散歩や適度な運動を欠かさないようにしましょう。若い頃からちゃんと筋肉をつけておくことで、高齢になった時にガクンと筋力が低下することを防げます。
その上で、質の良いタンパク質(肉や魚など)を食事にきちんと取り入れてあげましょう。炭水化物の多い食事は肥満の元となります。
食が細くなっている場合はウェットフードを人肌程度に温めたり、食器の高さを調整したりして、食べやすくする工夫も必要です。
犬が震える症状に関するよくあるQ&A!
最後に、犬と震える症状に関するよくあるQ&Aをまとめましたので、順番にご覧ください。
愛犬が震えていて元気がない。食欲はあるんだけど、病院に行くべき?
しかし、元気がない状態が続いたり食欲すら無くなってきたという場合であれば、早めに病院に連れて行くことをおすすめします。
愛犬が雷を怖がって震える。こういう時の対処法はある?
天気予報などで落雷が予想される時は、雨戸やカーテンなど外の音を遮断する対策をしておきましょう。
また、室内にいざという時の逃げ場を作ってあげるのも良いでしょう。部屋の隅やベッドの隙間はもちろん、クレートを利用するのもおすすめです。
寝てる時に愛犬が小刻みに震える。これは大丈夫?
ただし、呼吸が乱れている場合や体が硬直しているといった場合は、何か病気が隠れている可能性もあるので、すぐ病院に連れて行きましょう。
飼い主を怖がって犬が震えることはある?
その結果飼い主さんを見ただけでストレスを感じ、震えるというリアクションに繋がることもあるので注意が必要です。
震える愛犬の息がハァハァと荒い。何かの病気?
犬がハァハァと激しく呼吸する現象を「パンティング」と呼びます。震えとパンティングを繰り返す場合、痛いところがあったり、呼吸器や循環器に何か問題があるのかもしれません。早めに病院に連れて行きましょう。
【愛犬が震える】痛みや病気の可能性がある場合は病院へ。
私たち人間は痛みや症状を言葉で説明できますが、犬はそれができません。
彼らは、震える・痙攣する・嘔吐や下痢などの症状から体の不調や異変を訴えることで精一杯です。
生理的要因からくる震えならお家で適切な対処をして、改善するようなら心配はいりません。もし、それ以外の震えならすぐに信頼のできる獣医師に診てもらう必要があります。
飼い主さんは愛犬の異変にすぐ気づけるよう、できるだけ定期的に健康診断を受けさせておきましょう。愛犬が少しでも健康的に長生きするために大切なことです。