
ふだん何気なく見ている犬の便は、犬の健康状態を表すとても貴重な排出物です。
正常な便なら問題ありませんが、下痢や血便が出た時はものすごく心配になりますよね。かなり危険な状態なんじゃないか?と気持ちだけが焦ってしまいます。
ここでは、犬が血便をする原因や血便の見分け方、またそれらの対処法や動物病院へ連れて行くときの注意点などについて解説していきたいと思います。
ここで紹介する血便の原因や病気はあくまでも一例です。ネットにある体験談ブログや情報サイトだけを見て自己解決するのではなく、愛犬に血便が見られたら必ず動物病院を受診するようにして下さい。
目次
【犬の血便の見分け方】黒い便、ケチャップ便は要注意!
血便の原因へ入る前に、まずはどういった状態の便を血便というのか知っておきましょう。
血便といっても状態はさまざまで、色味も違います。便の状態や色味によって原因が異なるため、飼い主さんは愛犬がどんな便をしたのかをよく把握する必要があります。
赤い血が便の周りについている
便の周りに赤い血がついている場合、肛門や肛門周辺への外傷が考えられます。肛門を傷つけてしまう原因は、主に以下の2つです。
- 下痢のせいで肛門がすれてしまう。
- 硬すぎるうんちを出している。
この場合は犬の体内で出血が起こっているわけではありませんが、本当に肛門周辺で出血が起きているとも限りません。
時には大腸の後半部分で出血して血便が出てしまうこともあるため、何日も続く場合は獣医師に相談しましょう。
赤い血が便の中に混じっている
便の周りではなく便の中に血が混じっている場合、小腸から大腸の間で出血している可能性があります。考えられる病気がひとつではないため、すぐに動物病院を受診しましょう。
血便の他にも、下痢、嘔吐、食欲不振、元気がないといった症状も見られやすいのが特徴です。あまりにも出血がひどいと貧血になるので、十分に気をつけなければなりません。
便が黒い
便が明らかに黒い場合、小腸よりも上の場所(口腔~食道~胃のどこか)で出血が起きている可能性が非常に高いです。早急に動物病院へ連れて行く必要があります。
特徴としてはネバネバとした黒い血がついており、こげ茶の便と並べてみてもハッキリ分かるくらい黒いです。便の中までしっかりと黒ければ黒いほど、危険度が高まります。
赤褐色や暗い赤色の血便
便が赤褐色や暗い赤色をしている場合、寄生虫による体内の出血や中毒性のあるものを食べた(ネギ類、チョコレートなど)などが考えられます。いずれにせよ緊急性を要する血便なので、早急に動物病院へ連れて行きましょう。
ケチャップのような血便(鮮血が混じっている)
ケチャップ、あるいはトマトジュースのような血便をしている場合、感染症にかかっている可能性が非常に高いです。ひどい悪臭もするので、誰が見てもハッキリと分かります。
血便以外にも嘔吐、高熱、震えるなどの症状があり、感染症の種類によっては命を落とします。迷わず動物病院へ連れて行って下さい。
ゼリー状の血便
ゼリー状の血便が出た場合、腸内の粘膜が剥がれ過ぎている可能性が高いです。腸の粘膜が剥がれることは普通のことなのですが、多く剥がれ過ぎるとゼリー状になって排出されます。
原因としては、
- 腸が傷ついて炎症を起こしている
- 寄生虫
- 誤飲誤食
- 下痢が続いていた
などが挙げられます。
ただ、何が原因になっているかは動物病院を受診するまで分かりません。血の色が濃い、血の量が多い、何日も続くといった場合は必ず獣医師に診てもらいましょう。
犬が血便をしてしまう11の原因と対処法!
それでは次に、犬が血便をしてしまう11の原因と対処法について解説していきます。
下痢や便秘
下痢や便秘が原因で肛門周辺に傷がつくと、そこから血が出て便に付着します。この場合、鮮血や少しねっとりとした血がついていることが多いです。
体内からの出血ではないのでさほど心配する必要はありませんが、原因を特定するためにも必ず肛門周辺をチェックするようにしましょう。何日も続くようであれば、動物病院を受診して下さい。
この場合は、下痢や便秘を解消してあげることで便に血がつかなくなります。下痢の対処法については以下のを参考にしていただけたらと思います。
肛門周辺の病気
肛門周辺の病気や炎症が原因で、便の周りに血がつくこともあります。
下痢や便秘による血便を繰り返した結果で起こるものもあれば、メスの老犬がなりやすい会陰ヘルニアなども考えられるでしょう。
いずれにせよ血便が続く状態は良くないので、獣医師に相談するよにして下さい。
- 肛門嚢の炎症
- 肛門狭窄
- 会陰ヘルニア
- 肛門周辺の病気
- 直腸脱
原因によって対処法が変わってくるため、必ず獣医師の指示の元で適切な処置を行うようにして下さい。日頃から定期検診を受けることで早期発見できる病気もあります。
炎症性腸疾患(IBD)
炎症性腸疾患は腸に炎症が起きる病気です。発症すると、下痢だけでなく血便をすることがあります。
他にも嘔吐、腹部膨満などの症状が見られる特徴があるのですが、これは毎日というよりも、たまに起こるのが炎症性腸疾患の特徴だと言われています。
放っておくと重大な病気を見逃してしまう恐れがあるので、様子がおかしい場合は必ず病院へ連れて行き検査を行いましょう。
炎症性腸疾患が疑われた場合は、内視鏡検査をはじめ、血液検査などを行います。残念ながら完治することはできないため、食事療法を中心に薬を飲んで治療していくのが一般的なようです。
大腸ガン
大腸ガンが原因で血便をすることがあります。この時の血便は便の周りに血がついているタイプが多いため、肛門に異常がなかった時は大腸からの出血を疑った方がいいでしょう。
特徴としては、吐血、下血、排便をしづらそうにしているなどの症状があります。初期であれば完治する場合もありますので、すぐに検査してもらいましょう。
発見が早ければ早いほど完治する確率が高まります。肛門周辺に異常がない場合は、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。
突発性大腸炎
突発性大腸炎は、アレルギー、精神的ストレス、食べ過ぎなどが原因で発症します。他にも、寄生虫が原因となることもあるようです。
突発性大腸炎を患ってしまうと、粘り気のあるゼリー状の血便が出やすいのが特徴で、同時に下痢や嘔吐などの症状も見られます。
治療法は原因により異なるため、必ず検査をした上で適切な処置を行って下さい。
飼い主さんができることとしては、ストレスが原因ならストレスの元となっているものを改善することです。もしも食べ過ぎが原因ならご飯の与え方を工夫する、アレルギーが原因ならアレルギー対策を行うなどの対処法をとりましょう。
胃潰瘍
胃潰瘍を発症すると、黒いタール便が出ます。このような場合の便は、内部までしっかり黒いのが特徴です。
胃潰瘍になる原因はさまざまで、ストレス、熱中症、胃捻転、胃拡張、皮膚のマスト細胞ガン、薬の長期服用などがあります。黒いタール便の他にも、嘔吐、吐血、激しい腹痛などの症状が見られます。
黒い便が出た場合は、様子を見るよりも先に動物病院へ連れて行きましょう。すぐに胃潰瘍の原因を見つけてもらい、適切な治療を行うようにして下さい。
出血性胃腸炎
出血性胃腸炎を引き起こすと、胃や腸がひどく炎症してイチゴジャムのような血便が出ます。
便に混ざっている血の量が多いほど、一過性の貧血を起こす可能性があるので注意しましょう。さらには、水分と血液不足からショック状態に陥ることもあります。
未だ原因が不明な病気ですが、小型犬に起こりやすい傾向があると言われています。
原因がはっきりと分からないため、抗生物質やステロイドを投与して症状を緩和させていく方法が一般的のようです。
寄生虫
寄生虫に感染すると、血便や黄色い下痢が出やすい傾向にあります。
症状は感染した寄生虫により異なりますが、嘔吐、下痢、食欲不振、貧血、脱水症状、体重の減少などが主な症状です。
子犬や老犬が寄生虫に感染すると死に至る場合もあるので、早急に検査・駆虫してもらうようにしましょう。
- 鞭虫症(べんちゅうしょう)
- 鉤虫症(こうちゅうしょう)
- コクシジウム
- ジアルジア
寄生虫に感染したら、まずは駆虫薬で治療するのが一般的です。また、定期検診で予防できる病気でもありますから、できるだけ健康診断は受けさせてあげましょう。
あとは散歩中にあちこち舐めさせない、散歩から帰ってきたら必ず手足を拭く、ケージや器などを清潔に保つなどして、日頃から予防することも大事です。
細菌やウイルスによる感染症
細菌やウイルスに感染すると、ケチャップやトマトジュースのような悪臭の血便が出ます。
中でもパルポウイルス感染症は致死量が高く、発症してから7日以内に死亡するという恐ろしい病気です。初期症状が嘔吐や下痢であるため、なかなかパルポウイルス感染症に気づけないのが最大のデメリットかもしれません。
血便が出てからでは遅い場合があるので、嘔吐や下痢の症状が見られたらすぐに診察してもらいましょう。
- パルポウイルス感染症
- コロナウイルス感染症
- サルモネラ
- 大腸菌
感染源により治療法が異なります。必ず獣医師の指示の元で適切な処置を行って下さい。
中には有効な治療法がない感染症もあり、その時は二次感染を抑えるために抗生物質の投与や点滴などを行うようです。感染症を予防するためにも、年に1回のワクチン接種を必ず受けておきましょう。
中毒
食べ物による中毒で、血便を引き起こすことがあります。とくに有名なものが、ネギ類やぶどうなどですね。
知識を得ないまま愛犬になんでも与えてしまうと、時としてそれが「毒」になるので本当に注意しましょう。これは飼い主さんの意識次第で未然に防げます。
中毒症の症状としては、下痢、嘔吐、震える(痙攣)、泡を吹く、呼吸困難などがあります。体質によっては命にも関わるので、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。
もし中毒性のあるものを食べさせてしまったら、できるだけ早く動物病院へ連絡し事情を説明しましょう。タバコ以外のものであれば、過酸化水素水を少しずつ飲ませて吐かせる治療法などがあります。
飼い主さんは犬に食べさせてはいけないものをしっかりと学び、それらを含んでいるものは与えないよう注意することが大切です。
誤食
謝って異物を飲み込んでしまった場合、それが食道、胃、腸内などを傷つけて出血させることがあります。すると血便だけでなく、嘔吐や下痢なども伴うこともあるので十分に注意しましょう。
とくに子犬や小型犬が誤食した時には、誤食したものを喉に詰まらせて窒息してしまう恐れがあります。身の回り品には十分に注意するようにして下さい。
誤食してしまったら、すぐに病院で検査してもらいましょう。ものによっては外科手術をして取り出すこともあります。
飼い主さんは日頃から犬目線で周りを見渡し、誤食しそうなものが落ちていないかを確認するようにして下さいね。
愛犬がこんな様子の時は迷わず動物病院へ!
「これって病院へ連れて行った方がいいの?」と迷ってしまう場面もあるかと思います。
もし血便以外に以下のような症状・状態が愛犬に見られたら、迷わず動物病院を受診しましょう。体験談ブログや情報サイトを眺めて自己解決することだけはおすすめしません。
- 嘔吐している
- 下痢をしている
- 元気がない
- 食欲がない
- 発熱
- 脱水症状
- お腹を痛そうにしている(背中を丸めている)
- 青白い歯茎
- 震える(痙攣も)
動物病院が近くになくてすぐに向かえない場合は、まず電話で愛犬の状況を説明しましょう。その上で、獣医師からの指示を仰ぐようにして下さい。
犬を動物病院へ連れて行くときの注意点!
血便をしたからといって、慌てて動物病院へ連れて行くことは控えておきたいものです。まずは冷静になり、愛犬と便の状態をしっかりと確認しましょう。
そこで、飼い主さんがするべき4つのポイントについて簡単にまとめてみました。これらを抑えた上で、動物病院へ連れて行くようにして下さいね。
どんな血便なのかチェックをする
血便といっても、血便の種類や状態はひとつではありません。獣医師はどんな血便が出たのかを一番に知りたいので、診察をスムーズにするためにもしっかりと便の状態をチェックしましょう。
抑えるポイントは以下の通りです。
- 便の色
- 便のにおい
- 便の硬さ
- 便の状態(ゼリー状、水っぽい、ネバネバなど)
- 1日の便の回数
- 血便の回数
- 血はどんな風についているか
- 血の量は増えているか減っているか
これらは実際に目で見ても分からないことがあります。できるだけ、ビニール手袋をしながら便を直接触って確認するようにしましょう。
血便以外の様子をチェック
血便だけの場合と、血便以外の症状が見られる場合では診察の仕方も変わってきます。
飼い主さんは血便以外の愛犬の様子もしっかりと観察し、それを獣医師に伝えられるようにしておきましょう。抑えるポイントは以下の通りです。
- 嘔吐、下痢、発熱、震え(痙攣)などがないか
- 食欲はあるか
- 元気はあるか
- 生理中ではないか(生理の血を血便と勘違いしやすい)
- 血便する前の様子
- 食べた物・食べた量
- 愛犬を連れだした場所
些細なことでもすべてメモをする
そしてこれらすべてを、獣医師にちゃんと伝えられるようメモしておくことが大切です。
いざ動物病院へ着くと、内容が頭から抜けていることが多いかと思います。そうならないためにも、些細なこともちゃんと書き留めて獣医師に伝えられるようにしておきましょう。
便や愛犬の状態をうまく伝えられない時は、動画や写真に撮って獣医師に見せるのもおすすめですよ。
血便をビニールに入れて病院へ持って行く
原因を明確にするためにも、できるだけ便を採取して直接病院へ持って行きましょう。
ただし、収集してからあまりにも時間が経ちすぎていると正しく分析できない場合があります。できるだけすぐに採取し、12時間以内に分析してもらうことが大切です。
持って行くのが難しい便の場合は、写真を撮っていくことをおすすめします。
初めて愛犬の血便を見ると本当にびっくりします。人間でも血便など滅多にないですから、血便を見た瞬間に不安な気持ちになるのは仕方がないことだと私は思っています。
しかし、ここで飼い主さんがパニックになってしまうと、愛犬をさらに危険な目に合わせてしまう恐れもあります。
大切な命を守るためにも必ず冷静になり、そしてどんな些細なことでもいいので獣医師へ伝えられる準備をしておきましょう。