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【獣医師監修】犬の咳の7つの原因は!考えられる病気や治療法や対処法!

咳をすることが必ずしも体の不調であるとは限りません。しかし、中には思わぬ病気からくる咳の場合もあるので、十分に注意する必要があります。

こちらでは、そこまで心配しなくて良いタイプの咳と、病院に行った方が良いタイプの咳の特徴をそれぞれまとめてみました。

また、咳が症状として現れる病気の中でも特に多い7つのケースについても、獣医師の先生監修のもと分かりやすくお伝えしていきます。

この記事で解説する原因や対処法はほんの一例です。必ずしも咳をしているすべての犬に当てはまるわけではありませんので、愛犬の咳に違和感を覚えたら信頼のできる獣医師に相談するようにして下さい。
監修者
獣医師 / konomi動物病院院長 / 山口大学獣医学科卒 / 所属:日本獣医麻酔外科学会 日本獣医循環器学会 日本獣医輸血研究会
栗尾 雄三
広島市東区温品で「konomi動物病院」を平成30年に開院。ペットの高齢化や医療技術の進歩に合わせた最新のケアを提供し、皆さまの大切なペットが健やかに過ごせるようサポートしています。「何でも治せる獣医になりたい」と夢見てがむしゃらに頑張ってきましたが、今でも未熟さを感じ、日々挑戦を続けています。感謝されることもあれば、反省することもあり、この仕事を通じて生きている実感を深めています。地域に根ざし、未来の獣医を目指す人たちの目標となれるよう、これからも邁進していきます。ペットの健康について、どんなことでもお気軽にご相談ください。

犬の咳には「生理現象」「病気」の2つの原因がある。

犬の咳には「生理的な咳」「病気からくる咳」の2タイプがあります。

咳をしているから必ずしも病気と言えないのは、生理現象として出ている咳の可能性もあるからです。それぞれの症状の特徴などを以下にまとめてみました。

【カハッと乾いた咳をする】犬の生理現象。

  • 首が締まる(散歩中にリードを引っ張るなど)
  • 外の冷たい空気を急に吸った
  • 吠えすぎた
  • 興奮しすぎた 等

犬が「カハッ」というような乾いた咳をした時、それは生理現象としての咳である場合が多いです。上記のような理由で起こることがあります。

この場合は軽い咳を数回繰り返すくらいで、すぐに治まることがほとんどです。さほど心配する必要はありません。

【むせるような咳・止まらない】病気の可能性も。

  • 咳が止まらない
  • 変な咳をする(「ガーガー」や「ゼーゼー」など)
  • 定期的に咳を繰り返す
  • 呼吸が荒い
  • 口を開けて呼吸をし続けている
  • グッタリしている 等

問題なのは、病気からくる場合の咳です。上記のような症状が見られる場合は、病院に行って獣医師の先生に診てもらうことを強くおすすめします。

病気といっても原因はたくさんあるので、受診するまでは何の病気なのか?原因は何なのか?といった事を特定するのは難しいです。

また、これらの症状はあくまでも一例になります。とにかく愛犬の様子がいつもと明らかに違うと感じた場合は、すぐ病院に連れて行きましょう。

犬の咳から考えられる7つの病気と治療法!

考えられる7つの病気
  1. ケンネルコフ
  2. 僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁粘液腫様変性)
  3. 気管虚脱
  4. 異物の誤飲
  5. 肺炎
  6. 喘息(アレルギー反応・非アレルギー)
  7. フィラリア症

こちらでは、犬の咳から考えられる代表的な病気を7つにまとめてみました。順番にご覧ください。

【子犬に多く見られる】ケンネルコフ

主な症状
  • 咳が頻繁に出る
  • 呼吸が荒い
  • 高熱
  • 食欲不振
  • 膿のような鼻水 等

ケンネルコルフは、伝染性の呼吸器感染症のことでです。ウイルスや細菌の感染が主な原因となっており、この病気にかかると咳や発熱などの症状が急にあらわれます。

軽症であれば1週間~10日ほどで回復しますが、子犬や老犬のように体力がない犬が感染すると重症化することも珍しくありません。

ケンネルコルフで症状を重症化させないためにも、子犬の頃から定期的にワクチン接種を行って免疫をつけておくことが大切です。

治療法

内服薬として、咳止め薬抗生剤を使用する事が多いです。場合によっては、犬の免疫力をあげるための注射を使用することもあります。

また、ネブライザーと呼ばれる吸入器を使用する場合も。これは薬に水を混ぜて霧状にしたものを吸い込ませて、気管や肺の奥まで届ける治療法になります。

【心臓病の中で最も多い】僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁粘液腫様変性)

主な症状
  • 咳が出る
  • 疲れやすくなる
  • チアノーゼ
  • 呼吸困難
  • 失神 等

心臓病の中で最も多いと言われている、僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁粘液腫様変性)。心臓の中にあって蓋の役割をしている「僧帽弁」という部分がうまく閉まらなくなり、血液が逆流してしまう病気です。

詳しい原因については分かっていませんが、遺伝や加齢が関与していると考えられています。犬種で言うと、キャバリア・チワワ・マルチーズ・シーズー・ミニチュアダックスフンドなどの小型犬でよく見られます。

治療法

投薬で心臓病の進行に伴う症状を抑えたり、心臓にかかる負担を少なくするような内科治療を行うのが基本的な流れです。

ただケースによっては、外科手術が行う時もあります。外科手術はかなり高度な技術になるため、専門病院でしか受ける事はできません。

【ガーガーという呼吸音が特徴】気管虚脱

主な症状
  • 最初は乾いたような咳が出る
  • 感染症を併発すると湿った咳に変わる
  • ガーガー、ゼーゼーという呼吸音がする
  • 呼吸困難
  • チアノーゼ 等

気管虚脱(きかんきょだつ)は、空気の通り道である気管が途中で潰れてしまい、呼吸がしにくくなる病気です。はっきりとした原因は分かっていませんが、遺伝的な要因、肥満、老化などとが誘発要因として挙げられます。

最初は軽い乾いたような咳が出るだけですが、だんだんと「ガーガー」「ゼーゼー」といった呼吸音に変化していくのが特徴です。

末期の症状では、呼吸困難やチアノーゼ(血液中の酸素が不足している現象)などが見られることもあります。

治療法

症状が軽い場合は、気管虚脱の症状が軽くなる投薬を受けながら経過観察になる事が多いです。ただし根本的な治療ではなく、潰れた気管を完全に修復できるわけではありません。

外科手術を行うことで、気管の形状を維持することは可能だと言われています。ただ一般的な動物病院では、こういった高度な外科手術を受ける事は難しいのが現状です。40~80万円(あくまでも目安)といった形で、手術費も高額になります。

【緊急性の高いケースもある】異物の誤飲

主な症状
  • 咳が出る
  • 食欲不振
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 呼吸が荒い 等

おもちゃやヒモなどを誤って飲み込んでしまった時も、咳として症状に現れることがあります。食欲不振、嘔吐、下痢などの症状を伴うことも少なくありません。

飲み込んでしまった物によっては、早急な治療が必要な場合もあります。愛犬の様子が明らかにおかしいと感じる場合は、すぐ病院に連れて行きましょう。

治療法

胃の中に異物が残っている場合は、吐かせる薬・注射・点滴の投与などを行います。ただし飲み込んでしまった異物によっては、この方法が向かないケースもあるんです。その場合は、内視鏡で異物を取り除く方法も考えられます。

すでに小腸に入り込んでしまったケースだと、内視鏡で取り除くことができません。その時は、開腹手術を行う事もあります。

【痰が絡む咳をする】肺炎

主な症状
  • 痰が絡む咳をする
  • 呼吸困難
  • 元気喪失
  • 嘔吐
  • 発熱 等

肺炎は、ウイルスや細菌の感染、寄生虫、誤嚥などが原因で肺に炎症が起きてしまう病気です。

重症化すると十分な酸素を体に取り込むことができず、最悪命に関わることさえあります。こういった呼吸器疾患は急激に悪化する場合があるので、なるべく早く治療を開始することが大事です。

治療法

肺炎の状態を把握してから、それぞれのケースに合った薬や点滴を投与します。

また、ネブライザー(薬と水を混ぜた液体を霧状にする吸入器)を使って、気管や肺の奥まで薬剤を届ける処置をする場合もあるでしょう。

【アレルギーと非アレルギーがある】喘息

主な症状
  • 慢性的に咳が出ている
  • ヒューヒューという音の咳が出る
  • 呼吸が苦しそう 等
種類 主な原因
アレルギー
  • タバコの煙
  • ハウスダスト
  • 虫刺され
  • 芳香剤
  • 香水 等
非アレルギー
  • ストレス 等

気管支に慢性的な炎症が起こる病気である喘息(ぜんそく)。乾いたような軽い咳から呼吸困難に至るまで、いろんな重さの症状が見られます。

呼吸困難に陥ると、酸素が不足して発作を起こす事もあるので注意が必要です。そのまま放置していると、命を落とす危険性さえあります。

タバコの煙やハウスダストなど環境中のアレルゲンに反応するアレルギーのほか、ストレスなどの非アレルギーの要因も考えられます。

治療法

アレルギーが疑われる場合、まずは疑わしいものを避けるようにしましょう。それでも改善しない場合はアレルゲン特定の検査を受けることも方法の一つです。必要に応じて抗アレルギー剤駆虫薬などが投与されます。

【心臓に寄生する】フィラリア症

主な症状
  • 咳が出る
  • 運動量低下
  • 呼吸困難
  • チアノーゼ
  • お腹が膨れる(腹水) 等

フィラリア症は、寄生虫「フィラリア」によって引き起こされる病気です。蚊がフィラリアを媒介していて、蚊に刺されることで感染が成立します。

寄生虫と聞くと、腸内に寄生してうんちの中に出てくるイメージをお持ちの方も多いですが、フィラリアは血管や心臓の中に寄生する恐ろしい寄生虫なんです。

フィラリアが成長してくると血液の循環障害や肺障害に繋がり、命に関わることもあります。予防薬を定期的に使用して、未然に防ぐのが最善策です。

治療法

寄生してからの期間や、寄生したフィラリアの数によって治療法が異なります。駆虫薬でフィラリアを駆逐できそうな場合は、駆虫薬を使用します。

ただ大きくなった成虫のフィラリアに関しては、外科手術によって摘出する場合も。血管の中に細長い器具を挿入して成虫を釣り出すという特殊な手術になるので、行える獣医師はかなり少ないです。

犬の咳が止まらない時の対処法まとめ!

こちらでは、愛犬の咳が止まらない時の対処法についてまとめてみました。

【生理現象の咳】今すぐできる3つの対処法!

要因 対処法
リードを引いたら咳が出た 首輪をハーネス(胴輪)に変える
水を飲んだ後に咳き込む 水飲みボウルの高さを上げる
乾燥によって咳が出ている 加湿器を使用する

生理現象として出る一過性の咳に関しては、それぞれの要因に合わせた対処法を試してみましょう。普段から咳が出にくいような環境を作ってあげる事が大切です。

【咳が止まらない場合】愛犬の様子を動画・メモで記録する。

病気が疑われる異常な咳をしている場合は、症状をしっかりと獣医師の先生に伝える準備をしておきましょう。愛犬の様子を動画に収めておく事で、どんな病気の可能性があるのか診断の材料になります。

また、咳以外に気になる症状が出ている場合は、小さなことでもメモを取っておくのがおすすめです。そして、できるだけ早めに病院に連れて行くことが重要になります。

犬の咳に関するよくあるQ&A!

最後に、犬の咳に関するよくある質問と答えをいくつかお伝えしていきますね。

愛犬がえずくような咳をしている。これって大丈夫?

病気なのか生理現象としての咳なのかを判断するために、獣医師の先生に診てもらう事を強くおすすめします。特にえずくような咳が止まらない場合は、すぐ病院に連れて行ってあげましょう。

また、えずくようなしぐさは「吐き気」「嘔吐」の症状が出ているという可能性も考えられます。犬の嘔吐について詳しく知りたい場合は、以下の記事も合わせてご覧ください。

市販で売ってる人間用の咳止めシロップを犬に与えて良い?

人間用の咳止めシロップを自己判断で犬に与えるのは危険です。止めておきましょう。

獣医師の先生が咳止めシロップを処方した場合のみ、使用することができます。病院で処方されるものは犬用として用意されているので安心です。

老犬で咳が止まらない場合は、どんな病気が考えられる?

老犬で咳が止まらない場合、まず第一に疑われるのは心臓系の疾患です。「僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁粘液腫様変性)」は、心臓病の中でも最も多く見られる病気として知られています。

ただし実際に症状を診てもらうまでは、どんな病気にかかっている可能性があるのか判断できません。なるべく早く動物病院に連れて行きましょう。

寝起きに必ず咳が出る愛犬。病院に行くべき?

必ず毎日寝起きに咳が出るという症状が長く続いている場合は、病院に行くことを強くおすすめします。

軽く咳をする程度であれば、生理現象としての咳である可能性もありますが、念のために獣医師の先生に診てもらうのが一番良いでしょう。

愛犬が咳をしながら吐く。これは病気?

嘔吐を伴う咳が出ている場合は、病院に行くことを強くおすすめします。というのも、咳と吐く時のえずくようなしぐさは似ているところもあるからです。

獣医師の先生に診てもらう際は、スマホなどで撮影した動画を用意しておくのが良いでしょう。診断の手がかりになる事があります。

生理現象の咳ならすぐに収まる。止まらない場合は病院へ!

犬の咳についてのまとめ!
  • 犬の咳には「生理現象」「病気」の2つの原因がある。
  • すぐに治まる軽い咳程度であれば、さほど心配する必要はない。
  • 咳が止まらない等の異常が見られる場合はすぐ病院へ。
  • 犬が咳をしている原因は多岐に渡る。
  • 病院に行く際は、咳の様子を動画に撮っておくのがおすすめ。

犬の咳には、さほど心配しなくても良い「生理現象」からくるものと、「病気」からくるものの2種類に分かれます。

咳が止まらない・呼吸が明らかに苦しそうといった場合は、できるだけ早く病院に連れて行って獣医師の先生に診てもらいましょう。

何らかの病気の症状が咳として現れるケースも少なくありません。獣医師の先生からのアドバイスに従って、それぞれの病状に合う治療法を行うことが大切になってきます。

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