
犬の皮膚病には本当にさまざまな要因が絡んでいます。一概に「遺伝だ」とか「アレルギーだ」と言い切れないのが皮膚病というものです。
そんな犬の皮膚病は、やはりまず最初に信頼できる獣医師に診てもらうことが一番望ましい対処法と言えるでしょう。犬の皮膚病に精通した獣医師も増えてきています。
その際に薬等も処方されますが、一体どんな薬が出されるのか?また、市販薬や人間の薬でもいいのか?気になる犬の皮膚病の薬について解説していきたいと思います。
目次
犬の皮膚病に使われる薬は3タイプある
皮膚病の治療に使われる薬は、大きく分けて3タイプあります。
- 内服薬
- 外用薬
- 注射薬
この中でももっとも一般的なのが内服薬と外用薬ですが、薬も飲めない塗れないといった場合には注射薬が用いられます。
それぞれどんな薬が使われているのか、代表的な薬を見ていきましょう。
犬の皮膚病に使う「内服薬」
内服薬にはいろんな種類があり、よく知られている薬は以下の通りです。
- ステロイド剤
- 免疫抑制剤
- 抗生物質
- 抗真菌剤
- 抗ウィルス剤
- 抗ヒスタミンなど
カテゴリーに分けるとこんな感じになりますが、主によく使われている4つの薬を以下より紹介していきたいと思います。
経口ステロイド剤
特徴 | 強力な抗炎症作用。ステロイドの容量を多くすることで免疫抑制作用としても効果を発揮する。 |
メリット |
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デメリット |
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ステロイド剤でも、口から飲ませるものは「経口ステロイド剤」と分類されます。一般的に使われる薬は「プレドニゾロン」や「メチルプレドニゾロン」です。
ステロイド剤は量と期間を守れば有効な薬ですが、副作用が出やすい薬です。服用する際は必ず獣医師の指示を仰ぐようにしましょう。
- 肝臓や副腎など臓器への負担
- 皮膚や筋肉など組織への負担
- 胃腸への負担
- 多飲多尿
- 血糖値の上昇
- 糖尿病のリスクが高まる
- ホルモンの病気のリスクが高まる
- 食欲増加あるいは食欲不振
- 体重の増加など
オクラシチニブ
特徴 | アトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎など幅広いかゆみに効果がある。 |
メリット |
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デメリット |
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オクラシチニブを有効成分とする代表的な薬に「アポキル錠」があります。ステロイド剤と同等の効果を持ちながら、副作用が出にくい薬として近年注目を浴び始めています。
ただしステロイド剤のように、痛みとかゆみの両方に効くわけではありません。オクラシチニブはあくまでもかゆみを抑えることに特化した薬になります。
- 軽い嘔吐
- 下痢など
アトピカ
特徴 | シクロスポリンを有効成分とした犬の慢性アレルギー性皮膚炎の治療薬。 |
メリット |
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デメリット |
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アトピカは、シクロスポリンを有効成分とした免疫抑制剤です。犬の慢性アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の症状を緩和する効果があります。
効果が出るまで約4~6週間ほどかかるのが最大の弱点ではありますが、長期間服用してもステロイド剤のように副腎に影響を及ぼすことはありません。
とは言え、もともとは免疫抑制剤です。服用し始めると全身の免疫が抑えられるため、さまざまな感染症を引き起こしやすくするリスクが発生します。
- 嘔吐
- 下痢
- 免疫抑制による感染症
- 免疫抑制による潜在的な腫瘍の悪化
- 肝臓への負担
クラベット250/500
特徴 | 複合抗生物質製剤。2種の抗生物質を配合し、細菌感染症に効果を発揮する。 |
メリット |
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デメリット |
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クラベット250/500は、有効成分にアモキシシリン(殺菌作用成分)とクラブラン酸カリウム(アモキシシリンを強める成分)を使用した複合抗生物質製剤です。
皮膚感染症や尿路感染症、口腔感染などあらゆる感染症疾患の治療薬に適しており、服用してから約1週間ほどで効果が見られます。
ただしアモキシシリンがペニシリン系の抗生物質なので、ペニシリンに対して過剰に反応してしまう犬には使えません。
- 嘔吐
- 下痢
- 吐き気など
犬の皮膚病に使う「外用薬」
外用ステロイド剤
特徴 | 強力な抗炎症作用。ステロイドの容量を多くすることで免疫抑制作用としても効果を発揮する。 |
メリット |
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デメリット |
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外用ステロイド剤は経口ステロイド剤と比べると安全で、かつ患部をピンポイントで治療できる塗り薬です。代表的な薬だと軟膏タイプの「リンデロン」があります。
副作用に関しては、症状に合ったステロイドのクラスや量を守っていればひどく心配する必要はありません。しかし強いクラスのステロイドを必要以上に長期間使用し続けると、皮膚細胞の増殖が抑えられて皮膚が薄くなることがあります。
- 長期使用による皮膚の菲薄化
- 長期使用による毛細血管拡張など
犬の皮膚病に使う「注射薬」
犬インターフェロンγ
特徴 | 犬アトピー性皮膚炎の治療剤。 |
メリット |
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デメリット |
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アトピー性皮膚炎の治療として近年注目を浴びているのが、犬用インターフェロンγを使った「インターフェロン療法」です。
インターフェロンはもともと体内で作り出されている物質で、ウィルスの増殖を抑えたり、免疫システムを正常に戻す作用があります。根本的な治療ができるとして高い評価を得ていますが、注射器で投与してから効果が出るまでに約1ヶ月ほどかかるのが弱点です。
費用も決して安くありませんので、投与の頻度などは獣医師とよく相談した上で決めるようにして下さい。
最新の治療法のため、長期間使用した場合の副作用などはまだ分かっていません。
薬以外で犬の皮膚病に良いとされる3つの対策方法!
皮膚病を治すことはできませんが、民間療法、食事療法、あるいは予防策として良いとされている3つの方法を紹介します。
青森ひばから抽出される「ひば油」
特徴 | 雑菌・カビ・ダニなどの増殖を抑える作用のある「ヒノキチオール」が1~2%ほど含まれている。 |
メリット |
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デメリット |
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ひば油は「青森ひば」の樹木から抽出されるオイルです。天然のヒノキチオールが1~2%ほど含まれており、これが犬の皮膚病に良い効果をもたらすのではないか?と言われています。
ただし、すべての皮膚病にいいわけではありません。使用する際は、必ず専門家に相談した上で使用するようにしましょう。
免疫力を高める「サプリメント」
特徴 | 人間と同じ栄養素で犬の健康を内側からサポートできる。 |
メリット |
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デメリット |
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皮膚病を予防するための一環として、犬用サプリメントを与えるのも一つの方法です。
ただし、サプリメントと言ってもいろんな種類があります。効率よく予防するためにも、免疫力を向上することのできる成分が含まれているサプリメントを選ぶようにしましょう。
代表的なもので言えば「乳酸菌」「アガリクス」「ビタミンE」などがあります。
皮膚を清潔に保つ「スキンケアorシャンプー」
特徴 | 皮膚を清潔に保つ、保湿するなどの効果がある。 |
メリット |
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デメリット |
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アトピー性皮膚炎にはスキンケアやセラミドなどの保湿剤、ノミや花粉などの抗原による皮膚病にはシャンプーでの治療法も推薦されます。
シャンプー選びはなかなか難しいので、できるだけ獣医師に相談し、その時の肌質や皮膚の状態に合ったシャンプーを選ぶようにしましょう。
犬の皮膚病は市販薬でも治せるの?
動物病院へなかなか行けない時、市販薬で対処することもあると思います。先ほど紹介したアトピカやクラベットは通販でも購入できるので、使用している飼い主さんは多いでしょう。
もしも愛犬の皮膚に異常が見られたら、その時はまず動物病院に相談することを強くおすすめします。なぜなら、かゆみや赤みの原因を表面から見て特定することは困難だからです。
軽度のかゆみであれば、市販薬で抑えることも可能かもしれません。しかし、症状が進行している場合は市販薬では効かないこともあり、余計に皮膚炎を悪化させる恐れがあります。
それと、皮膚炎の原因によって使用する薬や治療法が異なります。中には薬を必要としない皮膚炎(食物アレルギーなど)もあるため、むやみに市販薬を使用するのは避けましょう。
病院での血液検査である程度のアレルギー物質を特定することができますから、多少遠くても病院へ足を運んで獣医師に相談することをおすすめします。
人間の薬を犬の皮膚病に使っても大丈夫?
よく「犬の皮膚病に人間の薬やオロナインを使っても大丈夫?」といった質問を見かけます。
実は、犬の皮膚病に人間の薬を使うことは可能です。犬の予防注射薬やフィラリア予防薬は動物用に開発されていますが、その他の薬の多くは人間用の薬と同じ成分だったりします。
しかし、犬の皮膚は人間の皮膚よりも薄くデリケートです。むやみに人間用の薬を使うと、薬が効きすぎて皮膚炎が悪化することもあるので注意しましょう。
それと、たとえ人間の薬やオロナインを使ったとしても犬の皮膚病は治りません。必ず動物病院で診察を受け、その上で適切な薬を投与するようにしましょう。
「薬を使えば犬の皮膚病は治る」と思われがちですが、その答えはYESとNOの両方です。
薬はあくまでも対処療法であって、根本的な治療にはなりません。また、原因が分からないままとりあえず症状に見合った薬を処方されているケースも少なくありません。
とは言え、「治療費が高い」という理由で自己解決することはなるべく避けましょう。どんな些細なことでも、検査で原因が分かればそれに越したことはありません。
現代の犬の皮膚病は、人の力なくして改善することは非常に難しいです。信頼できる獣医師、薬、原因と上手に向き合いながら、愛犬の皮膚病対策に努めていきましょう。