
犬の血尿は病気のサインでもあります。
血尿は血便よりも気付きにくい症状であるため、飼い主さんは毎日愛犬の尿を観察して異変に気づけるようにしておきましょう。
ここでは、犬の血尿の原因と考えられる病気、それに合わせた対処法などを解説していきたいと思います。
ここで紹介する血尿の原因や病気はあくまでも一例です。ネットにある体験談ブログや情報サイトだけを見て自己解決するのではなく、愛犬に血尿が見られたら必ず動物病院を受診するようにして下さい。
目次
犬が血尿をするときの行動サインはこれ!
犬の飼い方によっては、血尿にすぐ気づけないことがあります。たとえば、散歩の時しかおしっこをしない、室外で飼っているなどが挙げられますね。
しかし、室内で飼っていても血尿の色が薄いピンクやオレンジ色だとその異変に気づけないこともあります。中には血尿をしていても元気な犬もいるので、重大な病気を見逃してしまうこともあるため注意が必要です。
そこでまずは、犬が血尿をする時の行動サインについてまとめてみました。
- 頻尿
- 尿が減る
- 嘔吐
- 便秘
血尿だけというケースもありますが、たいていは何かしらの異常が他の場面で同時に出ていることが多いです。
ところが、初めて犬を飼う人、犬の血尿などを経験したことがない人はその異変にすぐ気づけるものではありません。
そこでおすすめしたいのが以下の方法です。もし愛犬が血尿をしているかもしれない…と不安になったら、まずは以下の方法を実行してみましょう。
- ペットシーツを白に取り換える(おしっこの色の変化にすぐ気づける)。
- おしっこに白いティッシュを押し当てて色を確認する。
とくに去勢・避妊手術をしていない犬や高齢犬が外でおしっこをする場合は、毎日ティッシュで尿の色の確認をすることをおすすめします。
犬が血尿をする8つの原因と対処法!考えられる病気は?
次に、犬が血尿をしてしまう8つの原因と対処法、そして考えられる病気について解説していきたいと思います。
食べ物による中毒
犬にとって中毒性のあるものを食べさせ、その結果、血尿、血便、嘔吐、下痢、痙攣を引き起こさせてしまう飼い主さんが意外にも多いものです。
もっとも代表的な食べ物がネギ類、チョコレート、ぶどう、にんにくなどですね。これらはふだん私たちも口にすることが多いので、ついつい犬にも与えてしまいがちです。
しかし、犬にとってこれらは中毒性が極めて高い食べ物。体質によっては少量を口にしただけで命を落とす危険性あるので、十分に注意しましょう。
食べ物以外にも、植物や薬品等も中毒性の血尿を引き起こすこともあります。
血尿が出るのを待っていると手遅れになるので、震え、嘔吐、泡を吹くなど何かしら異変が出たらすぐに動物病院で診てもらうようにして下さい。何か食べた後にいつもと様子が違うのであれば、それは中毒症状が出ている可能性が高いです。
細菌やウイルスなどの感染症
細菌やウイルスに感染すると本当に厄介です。血尿以外にも、尿が出ない、血便、嘔吐、下痢、発熱、痙攣などの症状が見られるようになり、感染源によっては死に至ります。
明らかに犬もグッタリして様子がおかしくなるので、血尿を見なくても異変が起きていることにすぐ気づくことでしょう。それくらい全身に何らかの異変が出ます。
緊急に手当てが必要となる場合が多いですから、至急動物病院で検査してもらいましょう。ちなみに考えられる感染症には、フィラリア急性症やバベシア症などが挙げられます。
この場合も血尿だけに左右されるのではなく、他に何か異変が出ているのであれば早急に診察してもらうようにして下さい。少しでも早い検査が、大切な命を救います。
そしてこのような感染症は、飼い主さんの努力次第で未然に防げます。定期的なワクチン接種と、月一回のフィラリア予防薬はできるだけ行いましょう。
膀胱炎(ぼうこうえん)
膀胱炎は、血尿が出るようになってしまう代表的な病気とも言えるかもしれません。
主に細菌による感染が原因ではありますが、中には寄生虫や腫瘍が原因となっていることもあります。さらには、ストレスなどが後押しして細菌感染による膀胱炎を悪化させることもあるそうです。
膀胱炎だからと軽く見ていると「膀胱結石」や「尿道結石」などを引き起こす恐れがあるため油断は禁物です。必ず動物病院で治療を行いましょう。
- ピンク色の血尿
- 尿道が短いメスに多い病気
- 尿が減る
- 排尿の時に痛がる
- 頻尿
- 陰部をよく舐めるようになる
- 落ち着かずにウロウロしている
膀胱炎の治療法は原因により異なるため、必ず動物病院で適切な処置を行ってもらいましょう。細菌が原因なら抗菌剤を、結石が原因なら食事療法を行いながら治療していくようです。
飼い主さんができることとしては、陰部やペットシーツを毎日清潔に保つこと、そして水分を多めに摂取させてトイレを我慢させないことです。散歩中におしっこをする癖がある場合は、なるべくこまめに外へ出してあげましょう。
膀胱結石(ぼうこうけっせき)
膀胱結石は、膀胱に結石ができる病気です。細菌性膀胱炎が主な原因ではありますが、もともと尿路結石ができやすい体質であることも原因となっているようです。
他にも、カルシウムの摂り過ぎや慢性的な水分不足も膀胱結石を引き起こす要因となります。膀胱にできた結石は周りを傷つけるため、そこから出た血が尿と混ざって排出されます。
- ピンク色やくすんだ赤色の血尿
- 排尿姿勢が増える
- 尿が減る
- 尿もれ
- 尿の臭いがきつくなる
- 頻尿
膀胱結石の治療法は原因や種類、大きさによって異なります。小さく溶かしやすい結石であれば内科療法、細菌感染を引き起こしているのであれば抗生剤などの投与、大きくて溶けにくい結石であれば外科手術を行うのが一般的です。
日頃から膀胱炎にならないよう注意するほか、水分を多めに摂らせる、栄養過多にならない食事を与えるなどの工夫をしましょう。
尿道結石(にょうどうけっせき)
尿道結石は、尿結石が尿道に詰まる病気です。つまり膀胱でつくられた結石が、尿道に流れ出て詰まってしまっている状態。そしてこの結石が尿道を傷つけ、血尿の原因をつくります。
これもやはり細菌性膀胱炎が主な原因となっているのですが、尿道結石の種類によって原因が変わります。必ず獣医さんに原因を解明してもらいましょう。
治療が遅れてしまうと急性腎不全や尿毒症を引き起こし、最悪の場合は死に至ることもあるので十分に注意して下さい。
- 赤に近いピンク色の血尿
- 尿道が長いオスに多い病気
- 尿の量が減る
- 尿がほとんど出なくなる(重症化)
- 排尿姿勢を何回も見せる
治療法としては、点滴で結石を溶かしたり、カテーテルで尿道に詰まった結石を膀胱に移動させる方法が一般的のようです。もしも押し戻せなかった場合、あるいは結石が大きい場合は、外科手術で結石を取り除きます。
日頃から水分を多めに取り、そしてトイレを我慢させないよう努めながら細菌性膀胱炎を予防してあげましょう。
膀胱腫瘍
膀胱腫瘍は、膀胱に腫瘍ができてしまう病気です。主な原因は膀胱ガンによる腫瘍ですが、中には腎臓疾患、膀胱炎、前立腺炎が原因となっている場合もあります。
膀胱ガンが原因の場合は、初期症状がわかりにくいのが最大の欠点。血尿が出た時点では既に手遅れであることが多いため、診断された時は末期段階であることがほとんどです。
治療を受けずに放置すると、リンパ節や骨盤などにも転移します。さらには3~6ヶ月以内に尿路閉塞を引き起こし、尿を出すことができない状態になるので注意が必要です。
- くすんだ赤や鮮やかな赤色の血尿
- 高齢犬がかかりやすい傾向にある
- 膀胱ガンはコリーとシェルティーがなりやすい
- 排尿の時に痛がる
- 排尿しづらそうにしている
- 尿の量が減る
- 頻尿
- 初期症状が膀胱炎と同じ
膀胱腫瘍の原因によって治療法が変わりますが、化学療法薬を使用した化学療法や、放射線治療が一般的のようです。
しかし、膀胱ガンの場合は確実な治療法がありません。膀胱の上部にある小さな腫瘍なら摘出手術も可能ですが、既に進行している場合は延命治療が精一杯となります。
飼い主さんができることは、愛犬の膀胱炎の予防と対策を行うこと、そして年に数回の尿検査を実施することです。膀胱炎が癖になっている場合は、半年に1回のエコー検査もおすすめします。
前立腺炎
前立腺炎は、尿道や膀胱から入り込んだ細菌によって前立腺が炎症を起こす病気です。
これは去勢をしていないオス犬がなりやすく、発症すると激しい痛みを伴う特徴があります。中には、激痛に耐えられず動けなくなる犬もいるほど。
血尿や排尿困難などの症状以外に、嘔吐、下痢、発熱、便秘などの症状が見られるのも前立腺炎の特徴です。ただし、慢性化するとほとんど症状が見られません。
放置すると原因菌が広まり、前立腺膿瘍や膀胱炎などを引き起こすこともあります。
- 鮮血の中に黄色い尿が混ざることがある
- 去勢をしていないオス犬に多い病気
- 5歳以上からリスクが高まる
- 激しい痛みが伴う
- 排尿の時に痛がる
- 発熱
- 嘔吐
- 下痢
- 食欲不振
すぐに治療が必要なため、まずは病院で病原菌を特定してもらいましょう。その上で、抗生物質や抗菌薬の投与による治療が行われます。もしまだ若いオス犬であれば、去勢手術や前立腺を取り除く手術を推薦されることもあるかもしれません。
予防法は、生活環境を清潔に保つこと、そして運動や食事で免疫力を高めてあげることです。また、去勢手術も予防法の一つとして考えるようにしましょう。
前立腺肥大
前立腺肥大は、男性ホルモンのバランスが崩れることによって引き起こされる病気のひとつだと言われています。しかし、ハッキリとした原因は未だ分かっていません。
とくに去勢をしていないオス犬に発症しやすく、5~6歳以降にそのリスクが高まります。
ちなみに、前立腺肥大の初期症状はほとんどありません。そのため、便を出しづらそうにしている、便秘が続く、血尿などの症状が見られるようになってはじめて検査を受け、前立腺肥大であることを知ったという飼い主さんが多いそうです。
放置すると細菌性膀胱炎を併発することがあるほか、さらに悪化すると前立腺炎も引き起こす可能性があるため注意しましょう。
- くすんだ赤色の血尿(毎回出るとは限らない)
- 去勢していないオス犬に多い病気
- 5~6歳以上からリスクが高まる
- 老犬に発症しやすい
- 尿の量が減る
- 頻尿
- しぶり
- 便秘
前立腺肥大の治療は症状により異なりますが、去勢手術がもっとも効果的のようです。これは「予防」にもなります。
もし前立腺が腸を圧迫している程度なら、食事療法を。小さく肥大している場合は、ホルモン剤によって肥大化を抑えるなどの方法もあります。ただし、かなり進行している場合は外科手術で除去します。
血尿の原因をつくり出しやすい犬の特徴とは?
血尿は元気な犬でも発症してしまうので、いかに恐ろしい病気であるかお分かりいただけたかと思います。
そこで最後に、血尿の原因をつくり出しやすい犬についてまとめてみました。
高齢犬(シニア犬)
犬も加齢ともに免疫力が低下するため、膀胱炎などの膀胱疾患や、腎臓疾患を発症しやすくなります。とくにメス犬なら膀胱腫瘍(膀胱ガン)、オス犬なら前立腺炎や前立腺肥大になるリスクが高まります。
膀胱腫瘍は避妊手術をしていても発症しますが、前立腺関係は去勢手術をすることによって予防できるものです。オスの子犬を迎え入れたら、ぜひ対策として考えておきましょう。
去勢手術をしていないオス犬
去勢手術をしないということは、男の子にだけある生殖器(睾丸)を残したままになります。
これはこれで問題ないのですが、やはり睾丸を残しておくと前立腺炎などのリスクが高まるのは正直なところです。去勢をしていれば避けられる病気…と考えると、どちらが犬にとって良いのかは本当に悩ましいところでしょう。
去勢手術はかわいそう…と思う飼い主さんも多いですが、少しでも長生きしてもらうためにも必要な方法ではあるのかもしれません。
避妊手術していないメス犬
避妊手術をしていないメス犬は、子宮の中に膿がたまる子宮蓄膿症を発症しやすいと言われています。
子宮蓄膿症は悪化すると膿で子宮が膨れ上がり、知らずにそのまま放置してしまうとやがて破裂します。するとたまっていた膿が体内に流れ出て、最終的には死に至るという非常に恐ろしい病気です。
メス犬が避妊をしていなくて、もし症状の重い血尿が出たときは真っ先に子宮蓄膿症が疑われます。ただし、生理が尿と混ざって血尿と勘違いしてしまうケースも珍しくないため、まずは専門家に相談して診てもらうようにしましょう。
ストレスを感じやすい犬
ふだんから過度のストレスを感じやすい犬は、膀胱炎になりやすい傾向にあります。たとえば、環境の変化が激しかったり、飼い主さんの不在が多いなどが挙げられますね。
さらに悪化すると、膀胱結石や尿道結石を引き起こす恐れがあるので注意しましょう。
犬に元気があっても血尿が出たら迷わず動物病院へ!
「これって病院へ連れて行った方がいいの?」と迷ってしまう場面もあるかと思います。
しかし、血尿は病気のサインである可能性が非常に高いです。様子を見たりせず、すぐに動物病院へ連れて行って相談した方が間違いないでしょう。
もしも深刻な病気が潜んでいた場合、検査を伸ばしていると手遅れになってしまうことも十分に考えられます。
そして動物病院へ連れて行く際は、血尿がついたトイレシートや拭き取ったティッシュを持参することをおすすめします。難しい場合は写真を撮り、それを獣医師に見せると診察がスムーズになりますよ。
犬の血尿を軽く見ないこと、これが重大な病気の早期発見・早期治療に繋がります。
血尿を見た時に思わず動揺してしまうと思いますが、まずは冷静になることが大切です。そして速やかに尿を採取し、かかりつけの動物病院で診てもらうようにしましょう。
血尿は、定期検診や尿検査を行うことで予防できる病気でもあります。愛犬のためにもしっかりと健康管理を行い、幸せな生活を送らせてあげましょう。