「ちょっとくらいの下痢なら、自宅で様子を見て良いよね……?」こう考えている方も多いかと思います。ただ、中には危険なケースもあるので注意が必要です。
こちらでは犬の下痢の種類・考えられる原因・対処法について、獣医師の先生監修の元わかりやすくまとめてみました!
最後まで読んで頂ければ、特に危険な下痢のケースや飼い主さんがすべき事など、すべてご理解いただけるかと思います。
目次
犬の下痢は一過性のケース・緊急性の高いケースに分けられる。
犬の下痢には、一過性ですぐに治るケースと重大な病気が潜んでいて緊急性の高いケースがあります。愛犬が下痢をした時には、便の状態・その他の行動サインをしっかりと観察しましょう。
犬が下痢をする原因は多岐に渡るので、素人では判断が難しいというのが現状です。軽症だとしても、プロの獣医師の先生に診てもらうことを強くおすすめします。
- 食餌やオヤツを変えた
- 引っ越しなどで環境が変わった
- 普段行かない場所に行った
- サプリやフィラリア予防薬を飲んだ
上記で挙げたような情報があると、病院の先生はより判断がしやすくなるでしょう。
下痢をしたとしても1~2回程度で、酷くない・ぐったりしていない・熱がない・食欲があるなど、比較的元気なら早期に回復する可能性があります。
反対に、下痢が続く・食欲がない・嘔吐するなどの症状が続いているなら、危険なことが多いでしょう。
- 消化管に障害を起こす細菌(大腸菌やクロストリジウム菌など)
- ウィルス(コロナウィルス、パルボウィルス)、原虫、寄生虫による感染
- 人の薬などによる中毒
- 観葉植物による中毒
- 膵炎
- 消化管腫瘍
- 敗血症
- 胆管炎
このように様々な原因で下痢が生じます。上記で挙げたもの以外でも考えられる原因はあるので、獣医師の先生に診断して頂くことが大切です。
【泥状・水っぽい・ゼリー状・血便など】犬の下痢には種類がある。
便の種類 | 特徴 | 主な原因 |
---|---|---|
軟便 | 便の形は保っているものの、掴んだりすると形がすぐに崩れてしまう。 |
|
泥状便 | 軟便よりも水分量が多く、便の形を保てていない。泥のような状態。 |
|
水様便 | 水のようにサラサラとした状態。 | 消化器系の病気 |
粘液便 | ゼリー状の粘膜をまとっている便。 | 大腸性下痢 |
血便 (黒色便) (タール便) |
黒っぽい血が混じっている状態の便。 | 食道・胃・小腸の出血 |
血便 (鮮血便) |
鮮血が混じっている状態の便。 | 大腸の出血 |
白色便 | 白っぽい油を含んだ便。 | 膵臓・肝臓・胆道系の病気 |
犬の下痢には様々な種類があります。こちらの表では、よくある便の色や状態から考えられる原因についてまとめてみました。
一般的に理想とされる犬の便は、ティッシュなどで掴んだときに形が崩れない・しっとりしているといった状態です。色は黄土色~茶色~こげ茶色くらいが良いとされています。
それよりも少しだけ柔らかい軟便程度であれば、自宅での適切な対処で改善される事も多いです。しかし、明らかに水分量が多い・血が混じっているなどの異常が見られる場合は、念のため病院で検査をした方が良いでしょう。
病院に行くときは、こういった便の色や水分量を記録しておくことが大事です。便をラップやビニール袋にくるんで持って行くのが理想ですが、難しい場合はスマホで写真を撮っておく事をおすすめします。
犬の下痢で考えられる原因6つ!対処法・予防についても解説。
- 食事の変化
- 環境の変化によるストレス
- 誤飲・誤食
- ウイルス・細菌
- 寄生虫
- 消化器系の病気
続けて、愛犬が下痢をした時に考えられる原因についてお伝えしていきます。6つの項目にまとめたので、順番にご覧ください。
食事の変化
ドッグフードやおやつを変えた・普段食べていない食べ物を初めて与えた・食べるエサや飲む水の量が変わったなど、何かしらの食事の変化によって下痢が起こるパターンです。
食べ慣れていないものが急に胃の中入ってくることで、お腹の調子が悪くなるという事はよくあります。
しかし中には、食物アレルギーを起こしている可能性も。その場合下痢だけではなく嘔吐や皮膚をかきむしるなど、他の症状が併せて起きることも少なくありません。
明らかにいつもと様子が違うのであれば、病院に連れて行くことをおすすめします。
嘔吐などの他の症状が出ている場合は、できるだけ早く動物病院に連れて行きましょう。
- ドッグフードの切り替えは、1週間~10日間くらいかけて徐々に行っていく。
- 初めて食べる食べ物は少量から与えてみる。
環境の変化によるストレス
引っ越しや大幅な模様替え・家族構成の変化・長時間のお留守番などによって、犬がストレスを感じ下痢をしてしまう場合があります。
取り除いてあげられる要因であれば、すぐにでも愛犬のストレス要因を排除しましょう。ストレスが解消されると、通常は数日ほどで下痢が収まることも多いです。
ただし、コントロールのしようがない要素もあるかと思います。その場合は、できる範囲で新しい環境に慣れさせてあげる・リラックスしてもらう努力をする事が大切です。
愛犬がストレスだと感じている要素を、できる限りの範囲で取り除いてあげましょう。
何をしても改善しない・何か他にも気になる行動サインなどがあれば、すぐに病院へ連れて行く事をおすすめします。
- 環境の変化をできるだけ与えないようにする。
- 信頼できるペットシッターさんやペットホテル等を見つけておく。
- たくさん触れ合って、愛犬のストレスが溜まらないように心がける。
誤飲・誤食
犬が食べてはいけないものを誤飲・誤食してしまう事で、下痢に繋がるケースがあります。おもちゃを始めとする食べ物以外のもの・チョコレートやぶどう等の中毒を起こしやすい食べ物がよくある例です。
異物を食べてしまった場合、下痢を始めとする症状が現れたりします。最悪の場合、腸が完全にふさがれている状態である「腸閉塞(ちょうへいそく)」を引き起こす可能性もあるので、注意が必要です。
誤飲・誤食をしてしまった心当たりがあるのなら、すぐにでも動物病院に連れて行きましょう。また、下痢以外にも嘔吐・食欲不振・元気がないなどの行動が見られる場合も、念のために検査をしておく事をおすすめします。
基本的にすぐ病院に連れて行きましょう。そこまで時間が経っていない場合であれば、吐かせる薬の処方・胃腸の洗浄などで解決する事も多いです。しかし、あまりにも大きい物を飲み込んでしまった場合は、外科手術で取り出さなければいけないケースもあります。
- 普段から部屋を片付けてキレイな状態にしておく。
- 中毒を起こすような食べ物を犬の届くところに置かない。
- できる範囲で愛犬の行動に気を配っておく。
ウイルス・細菌
犬の下痢を引き起こすウイルスとして代表的なものは、犬ジステンパーウイルス・犬パルボウイルス・犬コロナウイルスなどです。こういったウイルス感染は混合ワクチンで防げます。
とは言え、子犬の時期だと混合ワクチン接種プログラムがまだ完了していないケースもあるでしょう。ウイルスの種類によっては致死率が高いものもあります。免疫がつくまで安全な環境で守ってあげることが重要です。
またウイルス以外にも細菌感染による下痢もあり得ます。サルモネラ菌・大腸菌・カンピロバクターなどが主な要因です。
十分に加熱調理されていない肉などを食べると、こういった細菌に感染する恐れがあります。血が混じった下痢になるケースもあるので、おかしいと感じた場合はすぐ病院に行きましょう。
基本的にはすぐ病院に連れて行きます。病原体を特定して抗生剤・抗菌薬などを投与するのが一般的な流れです。完全に病原体がいなくなっていることを確認するまで治療を続けます。
ただし犬ジステンパーウイルス・犬パルボウイルスに関しては、今のところ根本的な治療法はありません。基本的には対症療法や補助療法になり、犬本来の免疫を高めることでウイルスの排除を目指します。
- 混合ワクチン接種プログラムを完了させる。
- ワクチン接種が完了していない状態で、外に出ない・他の犬と合わせない。
- 加熱が十分ではない肉を与えない。
寄生虫
お腹の中に寄生虫が入ると、下痢に繋がってしまう事があります。特にまだ免疫力が弱い子犬時期に多い現象です。母親犬・兄弟犬・ペットショップやブリーダーなど他の犬から伝染します。
一番よくあるのは「回虫(かいちゅう)」と呼ばれる白いひも状の虫がいるケースです。その他にも、条虫(じょうじゅう)・鞭虫(べんちゅう)といった土から感染するものもあります。
こういった寄生虫は肉眼で見えるので、まずは便の状態をしっかりと確認しましょう。ただし、トリコモナス・ジアルジア・コクシジウムなどの小さすぎて肉眼では確認できない寄生虫もいるので、確認できない=寄生虫がいないと断定はできません。
糞便検査をすれば、どの寄生虫がいるのかを特定できる事もあります。寄生虫の影響で下痢をしているのかも?と感じた場合は、便を持参した状態で愛犬を病院に連れて行きましょう。
基本的にすぐ病院に連れて行きましょう。糞便検査をして感染が確認できた場合は、寄生虫駆除剤などで駆除します。
- 免疫力が低い子犬時期は、他の犬との触れ合いをできるだけ避ける。
- 免疫力が低い子犬時期は、土があるエリアを避けて散歩する。
- 便の中に虫が紛れていないかチェックする。
消化器系の病気
口から肛門に至るまでの器官を消化器系と言います。消化器系のどこかで問題が起きている場合も、下痢として出てくることがあるんです。
水っぽくサラサラとした水様便が出た場合は「消化器系の病気」、黒っぽい血が混じっている下痢をした場合は「食道・胃・小腸の出血」、鮮血が混じっている下痢をした場合は「大腸の出血」が起こっているかもしれません。
また、白っぽい油を含んだ便が出たら「膵臓・肝臓・胆道系の病気」を疑います。こういった軟便以外の便が出た場合は、基本的にすぐ病院に連れて行きましょう。
すぐ病院に連れて行きます。消化器系の病気は多岐にわたるので、獣医師の判断に従ってそれぞれ適切な治療を受けましょう。
病気の種類によって予防法が違ってきます。ただすべてにおいて大切なのは、健康的な食生活を心がける+ストレスの少ない環境を作る事だというのが私の意見です。
【犬の下痢を甘くみてはいけない理由】基本的には動物病院に連れて行ってあげましょう。
一過性の下痢もありますが、自己判断で大丈夫と決めつけるのは良くありません。基本的には病院に連れて行くことを強くおすすめします。
と言うのも、中には下痢を放置して様子見をした結果、愛犬が亡くなってしまったという事例も実際に起こっているからです。(膵炎の事例など)
もし何かしらの病気にかかっていたとしても、早期発見・治療ができると大事に至らないケースもあります。
例え一過性の下痢だったとしても、自宅での適切なケア方法を獣医師の先生から聞けるので、間違いなく為になるというのが私の意見です。
犬の下痢に関するよくあるQ&A
最後に、犬の下痢に関するよくある質問とその答えをいくつかお伝えしていきますね。
犬の下痢の原因となりやすい食べ物はある?
例えば、ジャーキーやナッツ類などの硬い食べ物・脂身を多く含んでいるお肉など。また、穀物(米、小麦、とうもろこし)や芋類などの炭水化物に関しても、消化に時間がかかる代表的な食べ物になります。
冬の冷え・夏の暑さが犬の下痢の原因になるって本当?
ちなみに犬は全身が毛で覆われているので、どちらかというと暑い季節の方が苦手とされています。
夏バテからくる下痢を引き起こす事も多いので、毎日便の様子をしっかりとチェックしましょう。
愛犬が下痢をした。治す方法として「ビオフェルミン」が良いって本当?
しかし犬と人間では腸内環境が違うので、ベストな選択をしたいのなら犬用の整腸剤を与えるのがおすすめです。
愛犬が血がポタポタと落ちるような下痢をした。どうすれば良い?
中には重大な病気が隠れているというケースもあるので、早めに原因を特定させておくことをおすすめします。
犬が下痢をした時はさつまいもが良いって聞いたけど本当?
ただし、食物繊維は消化する時に胃腸に負担がかかりやすいと言われています。胃腸が弱い犬に関しては、逆に下痢が悪化してしまうという可能性もあるんです。
犬の下痢改善のために与えるのであれば、まずは少量から与えてみるのが良いでしょう。皮を剥いたさつまいもを加熱調理→潰した状態にすれば、胃腸に負担がかかりにくくなるのでおすすめです。
犬の下痢の原因は多様。基本的には病院へ連れて行きましょう。
- 犬の下痢には、一過性のケース・緊急性の高いケースがある。
- 自己判断をするのは難しいので、基本的には病院に連れて行く。
- 特に下痢以外にも嘔吐など他の異常が見られる場合はすぐ病院へ。
- 消化器系の病気が潜んでいる事もあるので、早期発見・治療が大切。
- 病院に行く時は、便の状態を詳しく伝えられるように準備しておく。
犬が下痢をしてしまう原因はたくさんあります。一過性ですぐに治まる場合もありますが、中には危険なケースもあるので注意が必要です。
自己判断で原因を特定することは難しいので、基本的には病院に連れて行くことを強くおすすめします。
特に、明らかに便の水分量が多い・血が混じっている・嘔吐などの他の症状も出ているといった場合は、様子を見ずにすぐ病院へ連れて行きましょう。
何かしらの病気が潜んでいたとしても、早期発見・治療で対処できるケースがあります。