飼いやすさから初心者にも大人気のトイプードルですが、知識不足から病気にかかりやすい体質にさせてしまったり、大切な命を短い生涯で終わらせてしまう飼い主さんは多いものです。
犬は人間のように言葉を話しませんから、事前になりやすい病気と対処法を知っておくことも大切です。知っておけば、病気の予防・早期発見に繋がることもあります。
縁があって出会えたトイプードルの寿命を少しでも伸ばすためにも、なりやすい病気とその症状・対処方法について知っておきましょう!
目次
トイプードルはどんな病気にかかりやすいの?
「トイプードルは病気になりやすい」という声をよく耳にしますが、トイプードルだから病気になりやすいということはありません。
ただ体が小さい分、気管や心臓の病気になりやすい傾向はあります。大型犬よりも歩幅が小さく運動量も倍になるため、それだけ呼吸や心拍数が速くなってしまうことが要因のひとつのようです。
他にも、関節の病気になりやすいのもトイプードルの特徴と言えるでしょう。しかしこれもトイプードルに限ったことではなく、比較的どの小型犬にも見られる病気のひとつです。
犬の病気は犬種・飼育環境・年齢・体格によっても異なります。一概に「この犬種はこの病気」と決めつけるのではなく、病気には環境や餌も影響しているということを知っておきましょう。
このあとに、トイプードルがなりやすい代表的な病気をいくつかまとめています。ぜひ一通り目を通し、こういう病気もあるんだということを知っていただけたらと思います!
足・股関節の病気
膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)
トイプードルをはじめ、小型犬がなりやすい代表的な関節の病気です。後ろ足の膝にあるお皿の部分(膝蓋骨)が外れた状態になり、症状が進行すると腫れて痛みが酷くなることもあります。
一度脱臼すると癖になるのがこの病気の特徴です。高い所からの飛び降りに注意したり、適度な運動で筋肉をしっかりつけておくことで予防できます。
主な症状
症状が軽いと分かりにくいですが、酷くなると足を浮かせるように歩く、足を引きずって歩く、足を触ると痛がる、散歩に行きたがらなくなるなどの症状が見られます。
予防&対策方法
膝蓋骨脱臼の予防法としては、床にカーペットを敷いて足への衝撃を軽くしたり、足の裏の毛をマメにカットして滑り防止をするなどがあります。
膝の負担を減らすためにも、過度な運動や高い所からのジャンプを避け、太り過ぎないよう体調管理にも気をつけましょう。
また、治療法は症状によって異なります。症状が軽い場合は薬やサプリメントで療養し、症状が重い場合は手術を行います。
レッグ・ペルテス
大腿骨頭(だいたいこっとう)が変形・壊死してしまう病気です。これは股関節の血液の流れが滞ってしまうことで起き、なぜそうなってしまうのかは未だ原因不明となっています。
レッグ・ペルテスも、トイプードルをはじめとした小型犬がなりやすい病気です。とくに成長過程の中(生後4ヶ月~1歳頃)でなりやすく、体重が10kg以上の犬に発生しやすい言われています。
主な症状
痛みを伴う病気のため、足を引きずる、足を上げて歩く、足に力が入らないといった症状が突然出ます。変な歩き方をしているなと思ったら、すぐに獣医さんに診てもらいましょう。
予防&対策方法
残念ながら、レッグ・ペルテスの予防法はありません。いかに早く飼い主さんが足の異変に気づけるかカギとなります。発見が遅く症状が悪化すると、歩行障害となる恐れもあるので十分に注意しましょう。
目の病気
白内障
目の中にある水晶体が、白く濁って視力が低下していく病気です。遺伝や糖尿病が主な原因と言われていますが、老化による目の衰えで白内障を引き起こすこともあります。
主な症状
白内障は眼球の中心部が白く濁っているのが特徴的です。また、歩いていて物によくぶつかる、前足で目をこするといった様子も見られるようになります。
予防&対処法
白内障を予防するには、定期的な健康診断を受けるほかありません。もし症状が見られた時は、目薬を使って進行を遅らせるのが一般的です。
緑内障
緑内障は、眼球内の液体により眼圧が高まって視神経を圧迫する眼病です。白内障と違って激しい痛みを伴い、嘔吐や食欲の低下といった体調異常も起こします。進行すると失明する恐れもあります。
主な症状
緑内障は、目以外の部分にも異変が現れ始める特徴的があります。代表的な症状では、嘔吐、食欲不振、元気がないといった様子を見せることです。
予防&対策方法
緑内障も、定期的に健康診断を受けることで早期発見できる眼病です。ただし急に発症するケースもあるので、油断はしないようにしましょう。
治療法は症状により異なり、目薬と内服薬、あるいは手術による治療法があります。
涙やけ
涙やけは、トイプードルのように目が大きい犬種がなりやすい症状です。涙がたくさん出ると目の周りが涙だらけになるため、そこに菌が繁殖して赤茶色に変色していきます。
主な症状
涙やけの症状は、普段よりも涙が多く出ていたり、目の周りが涙で濡れているといった様子が見受けられるようになります。
予防&対策方法
涙やけの主な原因は、フードやハウスダストなどによるアレルギーと言われています。涙やけが頻繁な場合は、食事を変えたり新鮮な空気を入れたりなどの工夫をしましょう。
ただし、涙やけの原因は遺伝的要因や逆さまつげ、もともと鼻涙管が細く涙がうまく通らない体質などもあります。必ずしも食事が原因とは限らないので、必ず検査をした上で対策をするようにしましょう。
こちらの記事で涙やけの原因や対策法について詳しく解説していますので、ぜひ愛犬のためにも参考にしていただければと思います。
進行性網膜萎縮症(PRA)
これはプードルに多い遺伝性の目の病気です。網膜が萎縮して正常に働かなくなり、進行するとやがて失明してしまいます。年齢は特に関係なく、成犬から老犬と幅広く発症します。
主な症状
まず暗い所を歩きたがらないのが進行性網膜萎縮症の特徴です。暗い所で目が見えにくくなるため、物にぶつかったり段差でつまづくなどといった様子が見られます。進行すると明るい所でも見えづらくなり、活動量が一気に低下し始めます。
予防&対策方法
この病気の予防法や治療法はありませんが、最近は遺伝子検査で事前に調べることができるようです。なるべく早めに検査を受けることで、その後のフォローがしやすくなります。
耳の病気
外耳炎
外耳炎とは、耳の中で菌が繁殖して赤く炎症を起こす病気です。トイプードルは垂れ耳なので、耳の中が蒸れて耳垢が溜まりやすいことが原因と言われています。
主な症状
外耳炎を発症すると耳の中の臭いがきつくなります。他にも痒がる、頭を振るなどの仕草を見せるようになり、耳垢が増えるといった症状も見られるようになります。
予防&対策方法
定期的に耳掃除をしたり、シャンプーをした後は耳の中に湿気がこもらないよう工夫することで予防できます。
症状が軽ければ点耳薬で、症状が重い場合は何度か通院して耳の洗浄を行うのが一般的なようです。
脳の病気
てんかん
てんかんとは慢性の脳の病気で、突然発作が起きる症状のことです。犬の場合は100頭に1頭の割合でなると言われ、脳の神経回路に異常が起きることで発症すると言われています。
一度発作を起こすと、繰り返し発作を起こすのがてんかんの特徴です。また「震える」ではなく「痙攣している」のもてんかんの特徴になります。
万が一わんちゃんが苦しそうに発作を起こしていても、まずはそっと見守って下さい。意識がないだけで、痛みや苦しみがあるわけではありません。
主な症状
てんかんの症状は主に2つあります。
- 意識が残っていて部分的に体が動かない、あるいは痙攣している部分発作。
- 意識がなく体全体が激しく痙攣している全般発作。
どちらの発作にせよ、痙攣した後すぐに何事もなかったように歩き出す犬もいれば、1時間以上~数日間ボーっとしている犬もいます。
1回の痙攣が10分以上続く場合、そして1日に3~4回発作を起こす場合は至急動物病院へ連れて行って下さい。重度のてんかんである可能性が極めて高いです。
予防&対処方法
もしてんかんを発症したら、飼い主さんはまず冷静になりましょう。そして以下のことを必ずメモするようにします。
- 発作が起きた時間
- 何分ぐらい発作をおこしていたか
- 意識はあるかないか
- 発作が起こる時何をしていたか
- 発作が収まったあとの様子
このメモは獣医さんにとって非常に重要な資料となります。なぜならてんかんは症状によってレベルが異なるので、その後の治療法も対処法も変わってくるからです。
残念ながらてんかんの予防法はないため、どれだけ早く発作に気づけるかがカギとなります。
心臓の病気
僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)
心臓の中にある僧帽弁(蓋の役割をするもの)がうまく閉まらなくなり、左心室から左心室へと血液が逆流してしまう病気です。比較的小型犬や老犬がなりやすいと言われています。
放っておくと身体に十分な血液が巡らなくなり、チアノーゼを引き起こすこともあります。
主な症状
運動をしていると座って休むようになったり、咳が出るといった症状が見られます。
予防&対処方法
予防法は、定期的に健康診断を受けることと肥満を回避することです。一度発症すると完治は難しいとされており、一般的には進行を遅らせる薬を使用します。
あとは激しい運動を控える、食事を見直すなどして、なるべく心臓に負担をかけないよう心がけましょう。
ホルモンの病気
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
副腎皮質から過剰にホルモンが分泌され、さまざまな症状を引き起こす病気です。脳下垂体の前葉や中葉に腫瘍ができてしまうことが原因だと言われています。
トイプードルとミニチュアダックスフンドに見られやすい病気ですが、ステロイド製剤の副作用により犬種関係なく引き起こすこともあるようです。
主な症状
主な症状は多飲多尿、脱毛(抜け毛が増える)、肥満、お腹が膨れるなどがあり、病気が進行すると膀胱炎や糖尿病を併発することもあります。
予防&対処方法
クッシング症候群は発見が難しく予防法がないため、獣医さんの元での早期発見・早期治療してもらうしか方法はありません。
治療方法としては、副腎皮質ホルモンの分泌のコントロールやステロイド剤の使用中止が一般的です。自己判断せず、必ず獣医さんのアドバイスに従って下さい。
皮膚の病気
皮膚炎
皮膚炎は、トイプードルに限らずどんな犬種でもなり得る病気のひとつです。
ただし皮膚炎といっても、原因や症状が異なります。食事によるアレルギーが原因なのか?ノミやダニが原因なのか?それとも遺伝的にアトピー体質なのか?原因はその犬によって完全にバラバラなので、皮膚に何かしら異常が見られたら必ず動物病院で検査を受けるようにしましょう。
主な症状
皮膚炎の種類によっても異なりますが、一般的には体を痒がる、湿疹、皮膚が赤くなる、毛が抜けやすくなるなどの症状が見られます。
予防&対処方法
皮膚炎を予防するためには、飼育環境を清潔に保つほか、毎日のボディケアとボディチェックも欠かさずに行いましょう。ボディケアはブラッシングだけでも十分です!毛のもつれ予防にもなりますし、ノミやダニを追い払う効果なども期待できます。
ちなみにトイプードルのトリミングは、月1回のペースがベストと言われています。シャンプーのし過ぎは逆に皮膚を傷めてしまうので、月1〜2回のペースで行うようにしましょう。
アトピー性皮膚炎
これは花粉、ハウスダスト、ダニなどを吸引することで引き起こされる皮膚の病気です。ただし、遺伝的にアトピーになりやすい体質が原因になっている場合もあります。
主な症状
顔や体をやたら痒がるようになり、進行すると湿疹やただれ、皮膚の乾燥を伴います。
予防&対処方法
アトピー性皮膚炎を予防するためには、まず飼育環境を清潔に保つことが大切です。毎日の掃除はもちろん、散歩から帰ってきたら体を拭いてあげることも立派な予防法になります。
また、日頃の食事や運動で体の免疫力を高めてあげましょう。新陳代謝UPは皮膚のバリア機能UPにも繋がるため、乾燥や皮膚トラブルを予防することができます。
膿皮症
犬の皮膚疾患の中でも、とくに発症率の高い皮膚炎です。シャンプーのし過ぎや質の悪いシャンプー剤などが原因と言われていますが、化膿する原因は本当に様々なようです。
主な症状
皮膚が化膿するのが特徴で、とくに顔や四肢のつけ根などに発症します。症状がひどいと、脱毛や色素沈着などを引き起こすこともあります。
予防&対策方法
シャンプーは月1回に留め、過度に体を洗い過ぎないことが大切です。その代わり、毎日のブラッシングや汚れやすい部位をペット専用のウェットティッシュで拭くといったことを心がけましょう。
治療法は、抗生物質を飲ませるのが一般的だと言われています。必ず獣医さんの診断の元、適切な処置を行って下さい。
トイプードルは目と足の病気になりやすいことで有名ですが、個体差によってなりやすい病気は本当に様々です。なので「トイプードルはこの病気」と勝手に決めつけないようにしましょう。
わんちゃんが感じている痛みは、正直飼い主さんでさえ分かってあげられません。だからこそ定期的に健康診断を受けて、早期発見・早期治療をすることが非常に重要です。
飼い主さんができることは、わんちゃんの健康管理を毎日行うこと。食事・運動・お手入れ・空調など、とにかくわんちゃんが快適に過ごせる環境をつくってあげましょう。