「犬は牛乳を飲んではいけない」「犬に牛乳を飲ませても良い」「ヤギミルクなら大丈夫」など、犬と牛乳の関係性については本当にいろんな情報が飛び交っています。
実際に私も「犬に牛乳を与えてもいいですか?」と質問を受けることがよくあり、やはり意図的に飲ませたいと考えている飼い主さんは多いのかもしれないと思いました。
ここでは、そもそも犬に牛乳を飲ませても大丈夫なのか?なぜ気をつけなければならないのか?など、犬と牛乳の関係性について解説していきたいと思います。
目次
そもそも犬は牛乳を飲んでも大丈夫?下痢になるって本当?
犬が牛乳を飲んでも大丈夫かどうかは、その犬が「乳糖(ラクトース)」という成分を分解するための消化酵素「ラクターゼ」をどれくらい持っているかによります。
- 乳糖(ラクトース):母乳や牛乳などに含まれる糖質。
- ラクターゼ:乳頭(ラクトース)を分解する酵素。
つまり、犬が牛乳を飲んでも大丈夫かどうかは犬の体質にもよるということです。
ラクターゼを多く持っている犬は牛乳を飲んでも下痢をしにくく、逆に、ラクターゼを多く持っていない犬が牛乳を飲むと下痢や嘔吐を引き起こすことがあります。
こればかりは犬の表面から見て分かるものではないのですが、だからと言って、わざわざ愛犬に牛乳を飲ませて様子を見るといった方法はおすすめしません。下痢をするかもしれないと初めから分かっている食品を、犬に与えること自体好ましいことではないからです。
ただし、どうしても牛乳を与えたいという場合もあるでしょう。その時は、ペット用のミルクがあるのでそういったものを利用することが望ましいです。
それでは次に、なぜ犬はラクターゼを多く持っていないのか?その辺りを、牛乳や犬の母乳などの栄養を絡めながら深く掘り下げていきたいと思います。
牛乳を飲んでも下痢をしにくい犬の特徴とその理由!
実は、離乳前の子犬は乳糖を分解するラクターゼを持っています。その理由は、犬から出る母乳にも乳糖が含まれているからです。
ただし、牛乳ほど乳糖が含まれているわけではありません。
成分 | 牛乳 | 犬の乳 |
---|---|---|
タンパク質 | 26% | 33% |
脂肪 | 28% | 42% |
乳糖 | 40% | 15% |
ミネラルなど | 6% | 5% |
このように、犬の母乳にも牛乳ほどではありませんが乳糖が含まれています。離乳前の子犬が母乳を飲んでも平気なのは、母乳に含まれる乳糖を分解するほどのラクターゼを持っているからになります。
ところが、そのラクターゼも離乳後にどんどん減少していきます。もう乳糖を分解する必要はないと体が判断すると、成長とともにラクターゼが減って乳糖を分解しづらい体質へと変化していきます。
ただし、離乳後も母乳や牛乳をもらい続けてきた子犬はラクターゼが減少しにくいようで、大きくなってからも牛乳で下痢をしにくくなる犬もいると言われています。
もし愛犬が牛乳で下痢を起こしたことがない場合は、もしかしたら離乳後に母乳あるいは牛乳を継続的に飲んでいた可能性がありますね。
犬が牛乳で気をつけておきたい2つのこと!
乳糖を分解できない犬が牛乳を飲むと下痢を引き起こすこと以外に、犬と牛乳のことで他に気をつけておきたいことが2つあるので以下にまとめてみました。
牛乳・乳製品アレルギー
牛乳には20種類以上のタンパク質が含まれており、この中の「カゼイン」というタンパク質にアレルギー反応を起こしてしまう犬がいます。
このカゼインは耐熱性があるため、加熱してもタンパク質の構造はほとんど変化しません。つまり、牛乳を温めてもアレルギーの出やすさは変わらないということです。
ちなみに、ヨーグルトやチーズのように発酵された乳製品であれば、牛乳と抗原体が異なるのでアレルギー反応は出にくくなります。
ところが、カゼインは発酵しても分解されにくい性質を持っているため、ヨーグルトやチーズに残った乳タンパクでアレルギー反応を示してしまう犬もいるため気をつけましょう。
牛乳の飲み過ぎによる栄養過多
基本的に、毎日きちんと栄養のある餌を食べているのであればわざわざ牛乳を与える必要はありません。むしろ与え過ぎによる栄養過多が心配です。
栄養は摂り過ぎても摂らな過ぎても体に毒です。最近の牛乳はいろんな栄養素がプラスαで入っているので、十分な食事ができているのであれば無理に与えなくても良いでしょう。
犬には牛乳よりもヤギミルクのほうがいいの?
ペット用のミルクをいろいろ探していると、ヤギミルクが圧倒的多数を占めていることが分かるかと思います。
これは、ヤギミルクが犬の母乳の成分に近いことがまず理由の1つにあります。
また、脂肪球が牛乳と比べて小さいのもヤギミルクの特徴です。消化機能が未熟な子犬や消化機能が低下している犬が飲んでも、下痢・便秘になりにくいこともヤギミルクが利用される理由になります。
ヤギミルクには、先ほど解説したアレルゲンとなる「カゼイン」が含まれていません。その代わり「ラクトグロブリン」というアレルゲン性を持つタンパク質が含まれているため、必ずしもアレルギーを発症しないとは限らないのでその辺りは注意しましょう。
ちなみに、ヤギは草以外のいろんな植物性のものを餌にすることから、牛のミルクよりも栄養が豊富に含まれている特徴があります。
犬にはペット用のミルクを飲ませた方がいい理由!
そして最後に、犬にはペット用のミルクを飲ませてあげた方がいい理由を簡単にまとめます。
多くのペット用のミルクは、犬や猫が消化を不得意とする乳糖が含まれていません。逆に、人間の赤ちゃん用のミルクは乳糖が含まれているものもあるため、体質に合わない犬が飲むと下痢を引き起こすこともあります。
最近は品質や鮮度にとてもこだわった安全なペット用ミルクが増えてきているため、ぜひそういったミルクを利用されてみるといいでしょう。
犬には牛乳が良くないと分かっていても、なぜ良くないのか?すべての犬がダメなのか?飲んだらどうなるのか?といった深いところまで説明できる人はそう多くはないでしょう。
たしかに、牛乳が体質に合わない犬は多いです。だからと言ってすべての牛乳がダメなわけではなく、ペット用に加工された牛乳であればお腹を壊すことなく飲める子もいますし、それでもダメならヤギミルクを試してみるという方法もあります。
ただ、愛犬が水分と栄養のある食事を毎日十分に確保できている場合は、無理にペット用のミルクを与える必要はありません。
体調不良から食事をまともに食べられない、小食で栄養を十分に摂取できない、あるいは自発的に水を飲まないから水分補給する必要があるなど、何かしらの事情で栄養や水分をなかなか摂れない場合にミルクを利用されるといいでしょう。
粉タイプのミルクであれば、ドッグフードや手作りご飯にかけて栄養のバランスを整えるということもできますよ。