犬が食べてはいけない食べ物の中に、必ずといっていいほどぶどうが入っています。
実は、犬にとってぶどうが中毒性のある果物と知れ渡るようになったのはここ最近のこと。なので、まだまだその事実を知らない人がたくさんいます。
なぜぶどうが犬にとって危険なのか?どのくらい食べると危険なのか?など、その辺りも絡めながら犬とぶどうの関係性について解説していきたいと思います。
目次
なぜ犬にとってぶどうが危険なの?中毒症状が出る量は?
犬がぶどうを食べてはいけない理由の1つに、腎不全や下痢などの中毒症状が多いことが挙げられます。
今回この記事を書くにあたって、日本小動物獣医学会誌の「ブドウ摂取後に急性腎不全を発症して死亡した犬の1例」も参考資料の1つとして読ませていただきました。
この報告書には、種なし小ブドウを約70g食べたマルチーズ(3歳)がブドウ中毒と診断された実例があるため、ぜひ参考として目を通しておかれることをおすすめします。
またこの他にも、アメリカやイギリスでもブドウやレーズンを食べた犬が急性腎不全を起こしたという例が数十件報告されています。
ところが、ぶどうの何が原因で犬が中毒症状を起こすのかははっきりと分かっていません。中毒を起こすメカニズムが解明されていないため、犬とぶどうの関係についてはまだまだ正確な情報というものが確立されていないのが現状です。
犬がぶどうで中毒症状を出してしまう量は?
こればかりは個体差がありますが、一般的にはこのように言われています。
- 致死量:犬の体重1kgあたり、生のぶどう30g/レーズン10~30g。
- 最少中毒量:犬の体重1kgあたり、生のぶどう19.6g/レーズン2.8g。
他にも、3kgの小型犬がレーズンを約14粒食べるとダメ、5kgの小型犬がぶどう一房食べたらダメ、大量に食べなければ大丈夫など、いろんな情報が飛び交っています。
しかし、これらの情報すべてに根拠がありません。少量だから平気なんて保証はどこにもないため、犬によっては一粒で中毒症状を起こすこともあると用心することが大切です。
とくに「ぶどうの皮」が中毒になりやすい?
ぶどの果肉よりも、皮の方が中毒になりやすいということが分かっています。ぶどうの実を食べてしまった犬よりも、皮を食べてしまった犬の方が中毒症状が重いそうです。
とは言え、その時の健康状態や体質によっては、ぶどうの実をちょっと食べただけでも中毒を起こすことも考えられます。
とくに腎臓や肝臓などの内臓系が弱い犬や、免疫力が低下している犬にはぶどうそのものを絶対に与えないようにしましょう。
ぶどうジュースを犬に与えるのはもっとダメ!
実は、生のぶどうよりもぶどうジュース(とくに濃縮100%)の方が犬にとって中毒性が高いことも分かっています。
なぜなら、ぶどうジュースにはぶどうの成分がギュッと凝縮されているためです。ぶどうの皮ごと丁寧に絞っている商品もあるため、より中毒の危険性が高まります。
他にも、レーズン、干しぶどう、ブドウアイス、ぶどうの木の種子から作られるグレープシードオイルなども犬に与えないようにしましょう。
犬がぶどうを食べてしまった場合の中毒症状は?
先ほどもお伝えしたように、犬がぶどうを食べると腎不全や下痢などのぶどう中毒が見られるようになります。
最悪死に至ることもある恐ろしい中毒なので(実際に死亡した例もある)、もともと腎臓などの内臓系にトラブルを抱えている犬がぶどうを食べてしまうと、取り返しがつかないほどの重篤症状となる可能性もあるため注意が必要です。
ぶどう中毒の主な症状を以下にまとめてみました。
- 急性腎不全
- 下痢や嘔吐
- 水をたくさん飲む
- 多尿または尿が出ない
- 元気がなくなる
- 呼吸が荒くなる
- 痛みから背中が丸くなる
軽い症状だと、ぶどうを食べてから約2~5時間後に、元気がない、呼吸が荒い、下痢や嘔吐をする、水をたくさん飲む、尿がたくさん出るなどの症状が見られます。
中毒レベルが重いと、尿が出なくなる、急性腎不全、尿が出なくなる、むくみ、腎臓の痛みで背中を丸くするなどの症状が見られるようになります。この時はすでに腎臓が破壊され始めています。
こうなると今度は体内の毒素を排出できなくなるため、有害物質が体内に蔓延し、尿毒症を引き起こして命を落としてしまうこともあります。
犬がぶどうを食べてしまったときの対処法は?
もしも愛犬がぶどうを食べてしまったら、必ず愛犬の側にいてしばらく様子を観察するようにして下さい。そして異変を感じた場合は、すぐにかかりつけの動物病院へ連絡して獣医師の指示を仰ぎましょう。
症状が出る出ないに関わらず、明らかに何粒も食べてしまった場合はすぐに動物病院へ連れて行くようにして下さい。
動物病院ではどんな処置や治療をするの?
中毒性のあるものを食べてしまった場合は、胃の内容物を吐かせて胃の洗浄を行うのが一般的です。そのあとに、下剤や活性炭の投与が行われます。
もし深刻な腎不全を起こしている場合は、入院して点滴治療などを行います。ここで治療が手遅れになると、腎機能不良や死の危険性が高まるので十分に注意しましょう。
ぶどうのような中毒性のあるものを食べた時は、少しでも早い治療が命を救います。
犬がぶどうを食べると中毒症状が起きる件について、まだまだ正確な情報が確立されていないため「デマ」と煽る人もいます。
例え自身の愛犬がぶどうを食べて何でもなかったとしても、それが他の犬にも当てはまるとは限りません。なのにも関わらず「犬にぶどうを食べさせても大丈夫」と煽る人の心理が私には本当によく分からないのです。
大事なのは、デマと煽る人の言葉を信じるのではなく、飼い主さん自身が犬の栄養学と体の仕組みを勉強して情報を得ることです。人間と犬では体の仕組みが違うということを理解できれば、ぶどうが犬にとって良くないんだということも理解できるのではないでしょうか。