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【獣医師監修】犬の去勢まとめ!費用・時期・メリットデメリットを解説!

オス犬をお迎えした飼い主さんなら、去勢手術をするのかしないのか迷うのは当然のことです。「なんだか可哀想……」と感じている飼い主さんも、少なくないと思います。

そこで今回こちらでは、犬の去勢手術をするメリット・デメリットついて、獣医師の先生監修のもと分かりやすくまとめてみました。

かかる費用・おすすめのタイミング・手術の流れについてもお伝えしていくので、ぜひ最後まで読んでみて下さいね。

監修者
獣医師 / konomi動物病院院長 / 山口大学獣医学科卒 / 所属:日本獣医麻酔外科学会 日本獣医循環器学会 日本獣医輸血研究会
栗尾 雄三
広島市東区温品で「konomi動物病院」を平成30年に開院。ペットの高齢化や医療技術の進歩に合わせた最新のケアを提供し、皆さまの大切なペットが健やかに過ごせるようサポートしています。「何でも治せる獣医になりたい」と夢見てがむしゃらに頑張ってきましたが、今でも未熟さを感じ、日々挑戦を続けています。感謝されることもあれば、反省することもあり、この仕事を通じて生きている実感を深めています。地域に根ざし、未来の獣医を目指す人たちの目標となれるよう、これからも邁進していきます。ペットの健康について、どんなことでもお気軽にご相談ください。

去勢とはオス犬の精巣を摘出する手術。

去勢手術とは、オス犬の精巣を摘出する手術のことを言います。全身麻酔をして陰嚢(いんのう)と呼ばれる部分の頭側を少しだけ切って、中の精巣を取り除くといった手順です。

メス犬の避妊手術のようにお腹を開く手術ではないため、体にかかる負担は避妊手術よりも少ないと言われています。

手術自体は20~30分で終わることが多いです。多くの場合、日帰り手術ですが、施設によっては1日程度の入院が必要になります。

犬の去勢をするメリット・デメリット!

続けて、去勢手術をすることによって得られるメリットと、起こり得るデメリットについてお伝えしていきます。

犬の去勢手術をする5つのメリット。

5つのメリット
  1. オス犬特有の病気の予防
  2. 発情によるストレスやトラブルからの解放
  3. マーキング行為の減少
  4. マウンティング行為の減少
  5. 災害時に備える

まずは、去勢手術をすることで得られる5つのメリットについてお伝えしていきます。

オス犬特有の病気の予防

去勢手術をするとかからなくなる病気
  • 精巣腫瘍
  • 精巣炎
  • 精巣上体炎
  • 潜在精巣
去勢手術をするとかかりにくくなる病気
  • 前立腺肥大
  • 前立腺炎
  • 前立腺過形成
  • 肛門周囲腺腫
  • 会陰ヘルニア

オス特有の生殖器やホルモン系の病気は、5歳以上になると発症のリスクが高まります。それまでに去勢手術を行うことで、これらの病気を予防できるというのは大きなメリットです。

精巣を取る手術になるので、精巣に関する病気にかかることは無くなります。その他のオス特有の病気に関しては、100%ではないけれどかなり確率を下げられるといった形です。

発情によるストレスやトラブルからの解放

去勢手術をすると生殖能力がなくなるため、発情したメス犬への行動欲求がなくなります。

すると狂ったように興奮したり、脱走してまでメス犬を追いかけるといった問題行動が減ります。また、他のオス犬との争いもほとんど見られなくなるでしょう。

あとは、行動欲求が満たされないことによるストレスへの予防にも繋がります。

マーキング行為の減少

未去勢のオス犬は、成熟期を迎える生後6ヶ月頃から後ろ足をあげて尿をするようになる事が多いです。「自分の縄張りを他の犬に知らせる」というのが主な目的として考えられています。

去勢手術を行うことで、マーキング行為が完全に無くなるとは限りません。しかし、少なくなる場合はあります。

マーキング行為が習慣化すると、去勢手術をしても治まらない可能性が高くなるので、できるだけ早めに手術を行うことが推奨されています。

マウンティング行為の減少

マウンティングとは、他の犬や人や物などに腰を押し付けて振るような行為です。こちらもマーキングと同じく成熟期を迎える時期に始まることが多いと言われています。

犬同士の上下関係を確かめたり、ストレスを発散するために行うのが主な目的です。去勢手術をすると、このマウンティング行為も減る可能性が高くなります。

災害時に備える

災害が起こった時に、去勢手術を行っていないとペットとの同行ができない場合があります。各自治体によってルールが違うので、事前にしっかりと調べておきましょう。

避難先で望まない妊娠を避けることはもちろん、発情によるストレスを無くすことができるのは大きなメリットです。

ちなみに去勢・避妊手術を行うことは、災害が起きた時のためにも環境省から推奨されています。(※1)

犬の去勢手術をする3つのデメリット。

3つのデメリット
  1. 全身麻酔のリスク
  2. 太りやすくなる
  3. 子孫を残せない

続けて、去勢手術をすることで起こり得る3つのデメリットについてお伝えしていきます。

全身麻酔をかけるリスクがある

去勢手術を行う時は、局部麻酔ではなく全身麻酔になります。そのため、麻酔による負担やリスクが伴ってくる事は知っておくべきです。

基本的に、10歳以上の高齢犬は麻酔のリスクが高まります。しかし、いくら1歳未満の若い子犬であっても、体質や持病によっては麻酔に耐えられず後遺症を残すこともあるため油断はできません。

もちろん事前検査をした上で麻酔を行いますが、100%保証ができるものではないという事を覚えておきましょう。

太りやすくなる

去勢手術のあとは、太りやすくなる傾向にあります。手術によって男性ホルモンの分泌量が減り、基礎代謝が低下してしまうからというのが主な理由です。

もちろん個体差があるので、すべてのコがそうなるわけではありません。しかし、今までと同じような食事を与え続けていたら、太ってしまった……!というのはよくあるお話です。

愛犬の肥満を防ぐためにも、食事量や内容が合っているのかをチェックすることが大事になってきます。

子孫を残せない

去勢手術をすると、生殖機能がなくなる=子孫が残せなくなります。一旦手術を行うと後戻りはできません。愛犬の子供を望んでいる場合は、慎重に考える必要があるでしょう。

犬の去勢手術の費用は2~4万円ほど!保険や補助金について。

続けて、犬の去勢手術にかかる費用についてお伝えしていきます。

2~4万円くらいが去勢手術の値段相場。

犬のサイズ 費用の目安

小型犬
25,000円前後

中型犬
30,000円前後

大型犬
35,000円前後

去勢手術の値段は病院によって変わってきますが、だいたいの相場は2~4万円くらいです。

犬のサイズが費用を左右する一番大きい要素にはなってきます。ただし、年齢や健康状態によっても費用が大きく変わってくるので、上記の表はあくまでも目安として参考にしてみて下さい。

ちなみに、すべて込みの値段を提示している病院もあれば、事前検査や麻酔代などの料金を別途で記載している病院もあるので、しっかりとチェックしておく事が大事です。

基本的に犬の去勢手術は保険の適応外。

犬の去勢手術の費用は、基本的にペット保険でカバーされません。と言うのも、ペット保険は病気や疾患に対してカバーされるものなので、健康な状態で行う去勢・避妊手術は適応外になるからというのが理由です。

ただし何かしらの疾患があり、治療の一環として行う去勢手術であれば、カバーされる可能性はあります。契約している保険の内容によって対応が変わってくるので、保険会社に問い合わせましょう。

犬の去勢手術に補助金・助成金がでる自治体もある。

自治体によっては、去勢手術に補助金を出しているところもあります。金額はおよそ3,000~5,000円程度です。

住んでいる場所の自治体サイトを一度確認してみましょう。その年によって方針が違っていたりする場合もあるので、最新の情報かどうかを確かめるのが大事です。

【犬の去勢はいつがベスト?】生後6ヶ月前後の時期がおすすめ!

犬によって個体差はありますが、だいたい生後6ヶ月くらいに成熟期を迎えると言われています。そのあたりのタイミングで去勢手術を推奨する獣医師が多いです。

と言うのも、成熟期を迎えるとマーキング・マウンティング行為が始まってきます。そういった行為が完全に習慣化する前に去勢手術を行うことで、行為の減少に繋がる可能性が高まるからというのが主な理由です。

またオス犬特有の病気を防ぐためや、麻酔のリスクを減らすといった意味でも、できるだけ早めの去勢手術が推奨されています。

とは言え、成犬になってからでも健康状態に問題がなければ去勢手術を行えるので、獣医師の先生とよく話し合いましょう。

【手術前・当日・術後】犬の去勢手術の流れ!

去勢手術の流れ
  1. 手術前検査
  2. 手術当日
  3. 手術後

こちらでは、去勢手術のざっくりとした流れについてお伝えしていきます。

手術前の検査を行う。

術前検査の主な内容
  • 一般身体検査(問診、視診、触診、聴診など)
  • 血液検査
  • 血液生化学検査
  • 胸部レントゲン検査 など

※動物病院により内容は異なる。

まずは、去勢手術を行っても大丈夫なのかどうかを確かめる「術前検査」を行います。これは手術のリスク、麻酔のリスク、術後のリスクを把握するためです。

とくに問題がなければ、去勢手術の日時を決めて本格的な予約を取ります。

去勢手術当日は万全な状態で!

去勢手術の当日までに、体調を整えておく事はとても大事です。もし、下痢や嘔吐などの何かしらの不調が見られた場合は、手術の当日だとしても病院に連絡しましょう。

手術の前日は、21時頃から絶飲・絶食を指導されることが多いです。こういった当日に備える手順は、事前にしっかりと確認しておきます。

手術自体は20~30分ほどで終わることが多く、ほとんどの場合は日帰り手術になるでしょう。ただ病院によっては様子を見るために1日入院をする場合もあるので、こちらも事前の確認が必要です。

去勢手術後の抜糸は1~2週間後!

去勢手術をした後の抜糸は、だいたい1~2週間後に行うことが多いです。抜糸の時に麻酔をする必要はありません。

手術をしてからしばらくの間は元気がなくなる事もありますが、ほとんどの場合は徐々に回復していきます。ただ何か気になる症状があれば、すぐ病院に連絡しましょう。

【犬の去勢手術後】お家での過ごし方3つのポイント!

お家での過ごし方3つのポイント
  1. 傷跡を舐めるのを防止する
  2. 激しい運動をさせない
  3. 食事や運動量の管理を行う

去勢手術をした後、お家で過ごす際に注意したいことがいくつかあります。分かりやすく3つのポイントにまとめたので、順番にご覧ください。

手術後は傷跡を舐めるのを防止する。

犬は違和感がある箇所や、痛みを感じる部分を舐める傾向にあります。去勢手術をした後の傷を舐めたいと感じるのは、自然な現象です。

ただ、傷を舐めると傷口が開いて治りが遅くなってしまうこともあるので要注意!

エリザベスカラー手術後専用の洋服を着させて、舐めないように対策することが大切になってきます。

手術直後は激しい運動をさせない。

手術をしてから少なくとも2~3日の間はしっかりと休ませてあげます。激しい運動はもちろん、散歩も控えるようにしましょう。

全身麻酔と手術の影響で、ぐったりとした表情を見せる事も多いです。食欲もなく、眠っている時間が長くなるかもしれません。

しかしそれは術後に起こる自然な姿になります。体が元に戻り始めるまでは安静にさせてあげて下さい。

散歩は、手術後4~5日目あたりから少しずつ開始するといいでしょう。過度な運動をしないこと、そして傷跡に汚れがつかないようにだけ注意して下さい。

食事や運動量の管理を行う。

術後に関しては、基本的に食事制限をする必要はありません。食べる=傷を治すことに繋がるでしょう。

ただ先ほどもお伝えしたように、去勢手術をすると基礎代謝が低下し太りやすくなるという傾向は出てきます。

そのため、手術前と同じ量の食事をずっと与えて続けていると太ってしまう場合もあるんです。体重が増えすぎてきたかなと感じたら、食事制限が必要になるかもしれません。

とにかく術後は愛犬の様子をしっかりとチェックし、ベストな食事量と運動量のバランスを探っていくことが大切だと言えます。

犬の去勢に関するよくあるQ&A!

最後に、犬の去勢に関するよくある質問と答えをいくつかお伝えしていきます。

犬の去勢手術後に性格の変化が起きるって本当?

個体差があるので、それぞれの犬によるというのが答えです。

去勢手術を行うことで男性ホルモンの分泌量が減るため、他の犬に対する攻撃性は和らぐ傾向にあります。その影響で「性格が変わった」と感じるケースもあるでしょう。

ただし、あまり変化を感じない場合もあるので、実際に去勢手術を行ってみるまでは分かりません。

愛犬の去勢手術を行う病院選びのコツが知りたい。

  • 説明が分かりやすく、安心できる。
  • 術前検査をしっかりと行ってくれる。
  • 何か問題が起きた時もすぐに対応してくれる。
  • 費用に関する説明が明確である。
  • 質問にきちんと答えてくれる。

病院選びのコツを挙げるとキリがありませんが、最低限こういったポイントを見ておく事をおすすめします。

カウンセリング時点での先生とのフィーリングはとても大事です。「この人になら愛犬を任せられる!」と感じられるのかをしっかりと見極めましょう。

メス犬の避妊手術とオス犬の去勢手術の違いは?

犬の性別 手術内容
メス犬の避妊 卵巣と子宮を摘出する、もしくは卵巣のみを摘出する手術。開腹手術になるので、体へかかる負担は大きい。
オス犬の去勢 精巣を摘出する手術。陰嚢(いんのう)の頭側を少しだけ切って、中の精巣を取り除く。

メス犬の避妊手術とオス犬の去勢手術の違いを簡単にまとめてみました。どちらも、手術を行うことで生殖機能が無くなるといった共通点があります。また全身麻酔下で行うという点も同じです。

ただし手術で切る範囲には違いがあり、体にかかる負担もどちらかと言うとメス犬の方が大きくなると言われています。

犬の去勢・避妊はどれくらいの割合で行われている?

ペットフード協会が行った【2017年全国犬猫飼育実態調査】によると、49.6%の犬の飼い主さんが「去勢・避妊手術済み」だという回答をしたようです。(※2)

この結果がすべてというわけではありませんが、一つの参考にはなるかと思います。

犬の去勢手術にかかる総合の金額を調べる方法は?

去勢手術を受ける病院によって、総合の金額が変わってきます。インターネットで検索をすれば、だいたいの相場は把握できますが、実際にあなたの愛犬にかかる具体的な金額は分かりません。

去勢手術を受ける病院の獣医師さんに、カウンセリングの時点で総額を聞いておきましょう。

犬の去勢手術について知る事が大切。その上でベストな選択を!

犬の去勢手術に関するまとめ!
  • 去勢手術とは、オス犬の精巣を摘出する手術のこと。
  • 手術自体は20~30分で終わることが多い。
  • オス特有の病気を防げること等が、メリットとして挙げられる。
  • 全身麻酔のリスクがあること等が、デメリットとして挙げられる。
  • だいたいの相場は2~4万円くらい。
  • 生後6ヶ月くらいのタイミングを推奨している獣医師が多い。
  • 手術前~当日までに、しっかりと体調を整えておく。
  • 手術後は決して無理をさせない。ゆっくりと回復を待つ。

オス犬の去勢とは、精巣を取り除く手術のことを指します。手術をするのかどうか、飼い主さんがしっかりと考える必要があります。

去勢手術をするメリット・デメリットをどちらも比較した上で、後悔しない選択をすることが大切です。

出典・参考サイト・参考文献
※1(災害時におけるペットの救護対策ガイドライン)環境省
※2公益社団法人日本獣医師会及び 一般社団法人ペットフード協会による実態調査
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