保護犬に限らず「すべての犬」を家族として迎え入れる時、最後まで責任をもってその子を幸せにする強い意志を持つことが大切です。
ここでは「保護犬」にスポットを当て、生涯の家族と出会えた21匹の元保護犬の過去と現在の表情の違いをビフォーアフター形式で紹介していきます。
目次
保護犬の未来を変えるために私たちができること
飼育放棄、虐待、多頭飼育崩壊、ブリーダー崩壊、引っ越し先で飼えないなど、いろんな理由から人間に裏切られ(あるいは飼い主が見つからず)保護された保護犬たち。
動物保護センターや保護団体などによって保護された犬たちの中には、私たちの想像を遥かに超えるような壮絶でつらい過去を経験している子が多数います。
そんな彼らのためにまず私たちができること、それは彼らの「過去」にちゃんと目を向け、その上で彼らの気持ちに寄り添い、そしてすべての命を尊重する心を養いながら彼らを愛し続けることだと私は感じています。
もちろん保護犬や殺処分される犬をこれ以上増やさないことも何より大事なので、そのためにも日本国民1人1人が命の価値をしっかり見出していかなければなりません。
たとえ飼うことができなくても、たとえ直接活動に携われなくても、団体やボランティアを何らかの形で支援したり、傷つく動物をこれ以上増やさないよう呼び掛けることは意識次第で誰でもできることだと私は思っています。見て見ぬふりは無関心と同じです。
私は今回、新しい家族(飼い主)の元で、人間やこの世界を再び信じようと心を開いた21匹の保護犬にスポットを当ててみました。
人間に心から信頼され愛される…。たったそれだけでこんなに犬の表情が変わるんだということを、ビフォーアフター形式でお伝えしていけたらと思います。
新しい家族ができた元保護犬21匹のビフォーアフター!
これから紹介する21匹の元保護犬たちは、この企画(保護犬のビフォーアフター)への参加募集をインスタグラムで呼びかけたところ集まって下さった子たちです。
すべて飼い主さんから直接お話を伺った上で内容を一部修正して掲載し、写真も飼い主さんご本人が直接選んだものを採用しています。
チャコちゃん
多頭飼い崩壊で保護されたチャコちゃん。当時は1つの部屋に多頭で閉じ込められており、散歩もさせてもらえず餌も置きっぱなし、非常に不衛生な環境の中で飼育されていました。
現在の飼い主さんがチャコちゃんをおウチに迎え入れた時、しばらくはご飯を食べる時も常にビクビクしていたようです。緊張からか、時には涙を流していたこともありました。
とにかく人や人の手、犬を怖がって怯えていたチャコちゃんですが、トイレもお留守番もたった1ヶ月で覚え、3年経った今ではこんなに素敵な笑顔を見せてくれることが増えました。
コタロウくん
徳島県のとある民家の庭で生まれたコタロウくん。産みの母犬はそのまま姿を消してしまい、残されたコタロウ君とその兄弟は保護施設に保護されました。
その後、名古屋のボランティアさんがコタロウくんを引き取ることに。そして現在の飼い主さんが、縁あってコタロウくんの新しい家族となりました。
おウチに迎え入れてから約半年は、慣れない環境のせいか一度も声を出したことがなかったそうです。今は自然と声も出るようになり、大人しくて優しいコタロウくんへと成長しました。
リズちゃん
岡山のとあるゴミ置き場に繋がれていたリズちゃん。しかし誰かに保護されるわけでもなく、そのまましばらくはその場に繋がれていたようです。
ところがある日、リズちゃんはリードを自ら噛みちぎりそのまま放浪。そしてたどり着いたのが、最初の保護主さんのお庭でした。
その後、保護主さんと岡山愛護団体の仲介を経て現在の飼い主さんのおウチへ。初めの頃はお散歩をとても怖がって震えが止まらなったリズちゃんですが、今ではコマンドをきちんと聞ける余裕も出て、街中でのお散歩もすっかり楽しめるようになりました。
マロンちゃん
アプリ「ジモティー」の里親カテゴリの中で、里親募集に出されていたマロンちゃん。それを見た現在の飼い主さんが、保健所へ出向いてマロンちゃんを家族として迎え入れました。
当時、マロンちゃんは極度の人間不信だったそうです。知らない人(とくに男性)にはよく吠え、散歩に出ても人や車を見ては怖くて何度も引き返していました。
その後、犬の保育園へ入園したマロンちゃん。そこでトイレを一発で覚えたマロンちゃんは、癖になっていた甘噛みも激減し、少しずつ人にも慣れ、そのおかげもあって今では見違えるほど明るい性格の子へと成長できました。
モコちゃん&しろくん
保健所で捕獲された元野犬のモコちゃん(左上)と、突然飼い主さん宅のお庭に現れた元野犬のしろくん(左下)。2匹とも同じ飼い主さんが家族として迎え入れ、現在は同じおウチで仲良く暮らしています。
モコちゃんは当時、極度の怖がり屋さんだったそうです。散歩に出ても歩けないほど怖がっていましたが、今では毎朝5時に飼い主さんを叩き起こすほど散歩が大好きになりました。
そしてしろくんは、人に触られることにまだ慣れていません。それでも最近はだんだん心を開いてきたようで、飼い主さんが用意したふわふわのお布団で寝てくれるようになりました。
デリコくん
元野犬のデリコくん。兄弟5匹(当時生後3ヶ月くらい)で山の中にいたところを近くの住人に発見され、その後無事に保護されました。発見当時、母犬はいなかったそうです。
今はすっかり良くなりましたが、保護された当時は皮膚病による脱毛がひどくて抜け毛だらけでした。真夏の暑い日だったので、余計にダメージが大きかったのかもしれません。
その後、現在の飼い主さんに家族として迎え入れられたデリコくん。初めの頃は見るものすべてに怯えていたデリコくんですが、今では外の世界もお散歩もとっても大好きになりました。
ハチくん
首輪もなく放浪していたところを保護されたハチくん。皮膚炎だったのかむしり取られたのかは分かりませんが、保護された当時は尻尾の毛がありませんでした。
現在の飼い主さんが縁あってハチくんと出会えたのは、その時保護してくれた方からの声掛けがあったからだそうです。そのおかげもあり、ハチくんにも新しい家族ができました。
今ではすっかり尻尾の毛がフサフサに生えたハチくん。まだまだ新しい所やバイクと自転車の音、小学生が苦手でビクビクしてしまいますが、幸せいっぱいな毎日を送っています。
リキくん
突然、現在の飼い主さん宅のお庭に迷い込んできたリキくん。その後、飼い主や里親を探したけれど見つからなかったため、現在の飼い主さんがリキくんを家族として迎え入れました。
当時のリキくんは、ガリガリに痩せていて毛並みもボサボサだったそうです。さらに体中泥だらけだったため、野良生活が長かったのではないかと思われます。
今では家の中にいれば安心だと分かったのか、外の世界がちょっぴり怖くなってしまったリキくん。そんなリキくんですが、一緒に暮らしているミニチュアダックスのリオちゃんとよくワンプロを楽しんでます。
シフォンちゃん
生後3ヶ月頃に、現在の飼い主さんの新しい家族となったシフォンちゃん。野良の母犬が産んだ3姉妹犬のうちの1匹で、保護団体に保護されたおかげで命を繋ぐことができました。
当時から人懐っこかったシフォンちゃんは、おウチにやってきても人見知りすることなくあっという間に馴染んでくれたそうです。2段ケージを飛び越え、帰宅した家族を嬉しそうにお迎えしていたこともありました。
現在は11匹の保護猫と一緒に暮らしているシフォンちゃん。猫たちをこよなく愛し、時にはキャットタワーに乗ってしまうほど元気いっぱいなシフォンちゃんへと成長しました。
ショウくん
茨城県で保護犬活動をしている方のおかげで、保健所から引き出してもらえたショウくん。里親募集をしてすぐに引き取り手が決まったものの、「オスは嫌だ」と言って返されてしまったそうです。
その後、現在の飼い主さんがショウくんを新しい家族として迎え入れました。当時はいろいろとストレスが溜まっていたのか、夜鳴きが続いて不安がっていた時期もあったそうです。
そんなショウくんも、家族の温かい愛情を注がれてきたおかげで人間が大好きになり、ドッグランに行っても犬見知りすることなく誰とでも仲良く遊べるようになりました。
藍(らん)ちゃん
香川県丸亀市の河川敷で野良の母犬から産まれた藍ちゃん。産まれてすぐに何かの動物に脚を食いちぎられ、個人ボランティアさんが保護した時には後ろの右脚がありませんでした。
その後すぐに病院で応急処置として脚先を縫ったものの、このままでは炎症の可能性もあると告げられることに。そこで現在の飼い主さんがかかりつけの獣医師と相談し、藍ちゃんの命を守るために断脚手術をしました。
最初は何もかもが恐怖で怯えていた藍ちゃんですが、先住犬の花ちゃんが色々教えてくれたおかげで人を怖がらなくなり、甘え上手で笑顔のとてもかわいい藍ちゃんへと成長しました。
凛(りん)ちゃん&馨斐(かい)くん
ARK(アニマルレフィージ関西)から現在の飼い主さんに引き取られた凛ちゃんと馨斐くん。母犬の飼い主さんが子犬たちを飼うことができず、凛ちゃんと馨斐くんを含めた6匹の兄弟がARKに保護されました。
いつ見ても元気いっぱいで明るい凛ちゃんと馨斐くんですが、凛ちゃんは乳び胸という珍しい病気を抱えており、馨斐くんは両先天性変形性股関節症で右脚の骨頭を切除しています。
常に死と隣り合わせの凛ちゃん、そして左脚も同じ手術をする予定の馨斐くんですが、家族の温かい愛情のおかげもあり、現在はとても幸せそうに毎日をイキイキと楽しんでいます。
パズーくん
石垣島のとある側溝に母犬と入り込んでしまっていたパズーくん。地元の方に無事救出してもらえたパズーくんたちは、その後、妹のシータちゃんと共に大阪にやって来ました。
そこで開かれた譲渡会でパズーくんは現在の飼い主さんと初めて出会ったのですが、飼い主さんは事前に見ていたパズーくんの写真を見て「絶対にこの子!」と決めていたそうです。
迎え入れて最初の頃はお留守番が大の苦手だったパズーくんも、今ではすっかりお留守番も得意になり、ぐっすり寝て家族の帰りを待てるほどになりました。
シンバちゃん
元野犬だったシンバちゃん。とにかく怖がりで常にビクビクしていたシンバちゃんは、譲渡会ではケージの隅で丸くなっているほどでした。
そんなシンバちゃんを現在の飼い主さんが一目で気に入り、新しい家族として迎え入れることを決めました。おウチに来たばかりの頃は怯えてばかりで、1週間ほどソファの下から出てこなかったそうです。
それくらい怖がりだったシンバちゃんも、今では何も怖いものがありません。見知らぬ男性に対してはまだまだ恐怖を感じてしまいますが、外で遊ぶことがとても大好きになりました。
まつりちゃん
福島県の矢祭町でガリガリになりながら放浪していたまつりちゃん。動物愛護センターに保護された当時は、体重が11kgほどしかありませんでした。
その後、現在の飼い主さんに引き取られてから順調に体重が増え、今では16kgを維持しています。突然発症したてんかんを家族みんなで乗り越えながら、無事ここまで成長できました。
最初の頃は鳴いてばかりで落ち着きがなかったまつりちゃんですが、今ではリビングでのびのびとお留守番できるほどに。寝ている時が一番幸せそうな顔をするまつりちゃんです。
おさじちゃん
放浪されていたところを保護されたおさじちゃん。殺処分寸前に引き出されることになり、そこから1年後に現在の飼い主さんの家族となりました。
当時は怖いものや苦手なものがたくさんあったおさじちゃんですが、飼い主さんの温かい愛情のおかげもあり、少しずつ苦手が平気なものに変わってきています。
最初の頃にはなかった笑顔もだんだんと増え、今ではすっかりおさじちゃんらしさを取り戻せたようです。リラックスする姿もたくさん見せてくれるようになりました。
なつ(なっちゃん)
動物の火葬場に捨てられていたなっちゃん。火葬場の従業員が発見してなっちゃんを動物病院へ連れていったところ、たくさん子供を産んだ形跡があり、帝王切開の傷跡も2箇所あったことが判明しました。
恐らく、なっちゃんは「繁殖犬」にされていたのでしょう。現在はやさしい飼い主さんの元で幸せに暮らしていますが、初めの頃は何にも興味を示さず寝てばかりだったそうです。
そんななっちゃんも今ではいろんなことに興味を持つようになり、明るい笑顔が格段に増え、少しずつ散歩も楽しめるようになってきました。
しんのすけくん
東京動物愛護センターに収容されていたしんのすけくん。レスキューに行ったNPOの方がしんのすけくんの前を通った時、一番元気に「僕を連れてって!」とアピールしていたそうです。
そして、しんのすけくんのその想いがNPOの方に届き、その日にしんのすけくんは引き出されることになりました。その話を聞かされた現在の飼い主さんは、「しんのすけは自ら再び生きるチャンスを得たように思う」と感じたようです。
少し臆病な一面もあるしんのすけくんですが、とにかく人懐っこくて人が大好き。頭も良く、人との距離をきちんとわきまえる賢い犬へと成長しました。
チャコちゃん
福島県のとある町で、兄弟一緒に段ボール箱に入って捨てられていたチャコちゃん。当時はまだ子犬だったチャコちゃんたちは、猫を保護している施設の前に捨てられていました。
その後、現在の飼い主さんがチャコちゃんと出会い、新しい家族として引き取ることになりました。おウチに迎え入れた時はピーピー鳴いてばかりで、とても弱々しかったそうです。
そんなチャコちゃんも、今ではすっかり笑顔の似合う明るく元気な子へと成長しました。たくさんの愛情を注がれながら、そして自然を満喫しながら家族仲良く暮らしています。
ジェイクくん
ブリーダーさんが続けられなくなり、ネットで里親募集に出されていたジェイクくん。現在の飼い主さんがたまたまネットで見つけ、ジェイクくんを引き取ることになりました。
引き取った当時はうんちまみれのかごに入れられていたようで、飼い主さんのお話によると「まるで虫かごのようだった」と…。かなり雑に扱われていたようです。
そしておウチにやって来てからしばらくは、家が半壊するほどの破壊王だったジェイクくん。今ではどんな犬と人間とも仲良くできるほどになり、飼い主さんと一緒に野良猫たちを心配をしています。
ラルゴくん
定点回収(保健所が不要犬猫を回収に回るシステム)に連れて来られたところで保護されたラルゴくん。現在の飼い主さんと出会ったのは、ラルゴくんが1歳になった頃の時でした。
当時のラルゴくんはひどい皮膚病にかかっていましたが、預かり元で治療されてすっかり良くなりました。ただ、体が大きいからかなかなか里親さんが決まらなかったようです。
飼い主さんがラルゴくんを家族として迎えようと決めたのは、ちょっと気難しい性格の先住犬エレンちゃんと相性が良さそうだと思えたから。その直感はやはり当たっていたようで、かれこれ10年間エレンちゃんと和気あいあい仲良く過ごしています。
環境省が発表した「平成29年度の犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」は以下の通りです。(参考:環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」)
犬 | 猫 | |
---|---|---|
引き取り数 | 38,511匹 | 62,137匹 |
返還数 | 12,286匹 | 316匹 |
譲渡数 | 17,669匹 | 26,651匹 |
殺処分数 | 8,362匹 | 34,854匹 |
全国の犬猫の殺処分数は年々減ってきてはいるものの、まだゼロではありません。ただし、返還・譲渡率は年々増えてきています。
これは民間の保護団体や個人で保護活動をされているボランティアの皆さまの力、そして私たち国民の理解、さらに「ペットショップからではなく保護犬を家族に迎え入れよう」という流れが少しずつ広まってきているおかげでしょう。
保護犬も生体販売されている犬も、元はすべて同じ「犬」であり、命があります。
人間の勝手すぎる理由から不幸な犬をこれ以上増やさないよう、命の大切さ、犬との関わり方、信頼関係を築くことの大切さを少しでも多くの人に知っていただけたらと思います。