
- 去勢手術の費用はどのくらい?
- 去勢手術にはどんなメリット・デメリットがあるの?
- 去勢手術を受けるとどんな病気を予防できるの?
- 何歳まで去勢手術できるの?
オス犬の去勢手術に関して、初めてオス犬を迎え入れた飼い主さんは分からないことだらけだと思います。
ここでは、オス犬の去勢手術の費用・メリット・デメリット・注意点など、去勢手術に関するあらゆることについて解説しています。
目次
まずは押さえておきたい犬の去勢手術の基本
去勢手術は、オス犬の精巣を摘出して生殖能力をなくす処置のことです。メスの場合は「避妊手術」といい、子宮と卵巣を摘出する処置が一般的になります。
このように聞くと、去勢手術に対してポジティブな印象を抱く人は少ないでしょう。
しかし、ここ数年で犬の去勢手術については肯定的に考える人も増えてきました。以下の3つの理由から、できるだけ去勢手術をするよう推薦する人も増えてきています。
- オス犬特有の病気を予防するため(防げない病気もある)。
- 「妊娠させた」というトラブルを防ぐため。
- 野犬や野良犬をこれ以上増やさないため。
実際、去勢手術をしていたら予防できたであろう病気にかかるオス犬は非常に多いです。去勢手術をさせておけば良かったかもしれない…と悔やまれる人も少なくありません。
生殖器系やホルモン系の病気は、未去勢よりも去勢済みのオス犬の方が圧倒的にかかりにくいことが分かっています。
あとは、避妊していないメス犬への勝手な交尾も予防できます。去勢手術を受けておくことで、犬が多く集まるドッグランや公園、トリミングサロンなどにも連れ出しやすくなります。
【犬の去勢手術の時期】何歳までにするのがいいの?
去勢手術をする年齢は特に決まってはいません。
しかし、麻酔のリスクや病気にかかってしまった時のことを考えると、生後6ヶ月~1歳未満がもっとも理想的だとは言われています。
もし1歳を過ぎて去勢手術を行いたいのであれば、信頼できる獣医師とよく相談の上、なるべく早い時期に手術を済ませられるようにしておくといいかもしれません。
去勢手術は10歳を過ぎても可能です。しかし、麻酔のリスクが一気に高くなるため、シニア犬の去勢手術は望ましいことではありません。事前の検査で問題ないと判断されたシニア犬に限り、手術を行うことができるようです。
犬の去勢手術ではどんな処置をするの?
去勢手術では、陰茎と陰嚢の真ん中にある皮膚を切開して2つの精巣を摘出します。
手術時間は動物病院によって異なり、20分~1時間と幅広いです。オスの場合は日帰りがほとんどですが、中には動物病院に1泊して様子をみることもあります。
- 全身麻酔をする。
- 陰茎と陰嚢の真ん中にある皮膚を切開。
- 2つの精巣を摘出。
- 皮膚を塗って傷口をとじる。
傷口の大きさは1~1.5cmほどですが、精巣の大きさによっては傷口が多少長くなることもあります。
犬に去勢手術をすることのメリットは?
次に、犬に去勢手術を行うことのメリットについてです。去勢手術はメリットばかりではありませんので、必ずこのあと紹介するデメリットも併せて確認して下さい。
生殖器やホルモンの病気にかかりにくくなる
オス特有の生殖器やホルモン系の病気は、5歳以上になると発症のリスクが高まります。それまでに去勢手術を行うことで、これらの病気を予防できるというメリットがあります。
以下に、去勢手術をしてかからなくなる病気と、かかりにくくなる病気をまとめてみました。
- 精巣腫瘍
- 精巣炎
- 精巣上体炎
- 潜在精巣
- 前立腺肥大
- 前立腺炎
- 前立腺過形成
- 肛門周囲腺腫
- 会陰ヘルニア
残念ながら、去勢手術をしても予防できない病気があります。それは前立腺腫瘍(前立腺ガン)です。こればかりは原因が未だハッキリしておらず、有効な予防法も治療法も確立されていません。
発情中のストレスやトラブルがなくなる
去勢手術をすると生殖能力がなくなるため、発情したメス犬への行動欲求がなくなります。
すると狂ったように興奮したり、脱走してまでメス犬を追いかけるといった問題行動が減ります。また、他のオス犬との争いもほとんど見られなくなるでしょう。
あとは、行動欲求が満たされないことによるストレスへの予防にも繋がります。
マーキングやマウンティングが減る犬もいる
オス犬によっては、去勢手術をしてマーキングやマウンティングをしなくなる犬がいます。したとしても、去勢前に比べると回数が減ったということもあるようです。
ただし個体差があるので、去勢をしても変わらずマーキングなどをする犬もいます。
犬に去勢手術をすることのデメリットは?
次に、去勢手術のデメリットです。メリットとよく比較しながら、去勢手術についてよく考えてみましょう。
肥満になりやすくなる
去勢手術のあとに太りやすくなる犬がいます。その理由は、手術によって男性ホルモンの分泌がなくなって基礎代謝が低下してしまうからにあるようです。
つまりホルモンバランスが崩れやすくなるので、どうしても太りやすくなる傾向にあるということです。しかし、これにも個体差があるので手術をしても太らない犬もいます。
全身麻酔をかけるリスクがある
去勢手術を行う時は、局部麻酔ではなく全身麻酔です。そのため、麻酔による負担やリスクも必ず伴ってきます。
基本的に、10歳以上の高齢犬は麻酔のリスクが高まります。しかし、いくら1歳未満の若い子犬であっても、体質や持病によっては麻酔に耐えられず後遺症を残すこともあるため油断はできません。
もちろん事前検査をした上で麻酔を行いますが、100%保証ができるものではありません。
手術が早いと骨や関節に悪影響が出ることも
性ホルモンは体の成長に影響するため、去勢手術が早いと骨や関節に悪影響を及ぼすことがあります。
- 骨肉腫(骨のガン)
- 股関節形成不全
- 前十字靭帯断裂(大型犬に多い)
- 心臓の血管肉腫
- 甲状腺機能の低下
ただし、必ずこれらを発症するというわけではありません。あくまでもリスクが高まるという意味で捉えることが大切です。
逆に手術が遅すぎても、今度は内分泌疾患や全身麻酔のリスクが高まるので注意しておきたいところです。
犬の去勢手術にかかる費用はどれくらい?
去勢手術の費用は動物病院によって異なりますが、一般的には15,000円~30,000円が相場です。もし入院するとなれば、ここに3,000円ほど上乗せされるでしょう。
また、手術の1週間ほど前に「術前検査」を行う必要があります。これは手術費用とは別になるので、別途3,000円ほどプラスになると考えた方がいいです。
そして手術を終えた5日後くらいに、今度は「経過診察」を行います。これもまた500~1,000円ほどかかり、さらに抜歯が必要であれば500円ほど加算されるでしょう。
助成金(補助金)を出してくれる市町村もある!
事前に申し込みをして条件をクリアできれば、犬の去勢手術に助成金(補助金)を出してくれる市町村があります。金額は3,000円~5,000円ほど。
助成金については各市町村によって異なり、また制度を設けていないところもありますので、事前によく確認するようにしましょう。
犬の去勢手術までにするべきことと過ごし方
去勢手術を行う前に、必ず「術前検査」を行います。これは手術のリスク、麻酔のリスク、術後のリスクを把握するためです。
術前検査では、一般身体検査(問診、視診、触診、聴診など)、血液検査、血液生化学検査、胸部レントゲン検査などを行います。(動物病院により異なる)
とくに問題がなかったら去勢手術の予約をします。その場でわからなくても、後日電話で予約することも可能です。
手術前日と当日の注意点
手術する日が決まったら、その日まで健康の状態を良好に保ちましょう。
前日は21時以降から絶飲・絶食をし、当日の朝も何も食べずに動物病院へ向かうようにします。もし食べさせてしまった場合は、必ずその旨を先生に伝えて下さいね。
犬の去勢手術後の過ごし方と気をつけたいこと!
去勢手術が終わって家に帰ってきてからの過ごし方、気をつけたいことについてです。
2~3日は安静に!散歩も控える!
全身麻酔と手術の影響で、家に帰ってきてからも犬はぐったりしています。疲れた様子を見せては、食欲もなく眠っていることが多いでしょう。
でもそれは術後に起こる自然な姿なので、体が元に戻り始めるまでは安静にさせてあげて下さい。2~3日はそっとさせ、散歩も控えるようにしましょう。
散歩は、手術後4~5日目あたりから少しずつ開始するといいでしょう。過度な運動をしないこと、そして傷跡に汚れがつかないようにだけ注意して下さい。
暖かい環境をつくる
全身麻酔の影響で、手術後1~2日間は体温が低下します。低体温症にならないよう、暖かい環境をつくって安静に過ごさせましょう。
おしっこやウンチを我慢させない
手術後の痛みが原因で、おしっこやウンチを我慢する犬がいます。本来ならすぐに排泄するのですが、丸1日しないようであればすぐに動物病院に相談しましょう。
食事・運動量の管理をしっかり行う
先ほどもお伝えしたように、去勢手術をすると基礎代謝が低下するので太りやすくなります。そのため、手術前と同じ量の食事を与えていると太る可能性があります。
術後に食事を開始させる時は、いつもより少なめの量を与えるようにしましょう。激しく動いても大丈夫になり始めたら、運動量を増やして食事の量を元に戻して様子をみます。
犬は去勢手術をすると性格が変わるの?
最後に、多くの飼い主さんが話題にしている去勢手術後の性格について解説します。
実は、去勢手術をすると性格が穏やかになりやすいという説については本当のようです。もちろん個体差があるので、すべてのオス犬に当てはまるわけではありません。
ただし、性格が変わるといっても劇的な変化ではありません。わかりやすく言えば、レベル10が9.5に下がったくらいの感覚です。
性格の変化を求めての去勢手術は絶対におすすめしませんので、その辺りをよく理解した上で手術を行いましょう。
犬にとって去勢手術がいいのか悪いのか、それはいつの時代になっても問われるテーマだと思っています。す
去勢手術をすることによってリスクが高くなる病気もあれば、しなければしないでリスクが高まるオス特有の病気もあります。だから一概に良い・悪いと言うことはできません。
ただ1つだけ言えることは、去勢手術をすることで思わぬ事故(メス犬を妊娠させた、子犬を増やしてしまったなど)を防ぐことはできるということです。
日本は殺処分されてしまう犬があまりも多いですから、不幸な犬をこれ以上生み出さないためにも、去勢手術をすることは大事なことなのかもしれません。